絶滅危惧種に指定される「ツシマヤマネコ」の人工繁殖に2019年度から取り組んできたよこはま動物園ズーラシア=旭区=で、3月18日に同種の赤ちゃんが誕生した。人工授精による繁殖成功は国内初の事例で、同園でツシマヤマネコが繁殖したのは今回が初めて。
ツシマヤマネコは、長崎県対馬だけに約100頭のみ生息している野生のネコ。大きさは通常の飼い猫と同程度で、耳の後ろの白い斑紋と太く長い尻尾が特徴とされる。生息環境の悪化などが原因で数が減少し絶滅が危惧されることから、1971年には国の天然記念物、94年には国内希少野生動植物種に指定されている。
種の保存に尽力
ズーラシアでは、環境省が取り組むツシマヤマネコ保護増殖事業に基づき2006年からツシマヤマネコの飼育を開始。
1つの動物園で飼育することへのリスク回避策として、分散飼育に貢献してきた。近年飼育下にある個体群が高齢化する中で、19年度からは国内では同園のみが有している人工授精技術を用い人工繁殖担当園館としての新たな役割を担ってきた。
今回の繁殖成功の鍵を握った人工授精技術「腹腔鏡下卵管内人工授精」は、ホルモン剤で卵巣の状態を適切にコントロールした後、腹腔鏡を使い卵管内に精子を直接注入する方法。19年度は妊娠に至らなかったが、技術の修正を行ったことで、今年3月上旬に5歳のメス(愛称・マミ)の妊娠を確認し産子を得た。
誕生した赤ちゃんは生後1日まで母親が面倒を見ていたが、母乳がしっかりと出ていなかったことから人工哺育に切り替えて生育。現在はすくすくと成長しているものの、細心の注意を払って飼育に取り組んでいる。今後の公開や愛称募集は未定だ。
一般にネコ科動物は動物園で飼育される動物の中でも生理学・解剖学的に人工繁殖が難しいとされる。ズーラシアの職員は「絶滅危惧種であるツシマヤマネコの保全に、当園の技術で貢献できたことがとてもうれしい。今回の繁殖成功によって、国内にツシマヤマネコという絶滅危惧種がいることを知ってもらうとともに、それらの種を守るために動物園が行っている『種の保存』の役割や取り組みを知ってもらう機会になれば」と話した。
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