夏の高校野球優勝監督に聞く 「9度目の正直」で横浜下す 前橋育英高荒井直樹監督の原点
第95回全国高校野球選手権大会3回戦で宿敵・横浜高校に勝ち、甲子園初出場で頂点に立った群馬代表、前橋育英高校。横浜市出身の指揮官、荒井直樹監督(49)は渡辺元智監督(68)率いる横浜に、現役選手、監督時代と合わせて8回敗れた経歴を持つ。日大藤沢高校の選手として2回、監督で5回。前橋育英の監督になってからは関東大会で1回、涙を飲んでいる。
8月12日、横浜との試合前日。荒井監督は自身が横浜に1度も勝っていない事実を、あえて打ち明けた。「9度目の正直ってあるよな。3の倍数だから」。選手たちにそう語りかけた。
試合は1回に2点を先制した前橋育英が主導権を握り、横浜打線を1点に抑えて7―1で終盤へ。高橋光成(こうな)投手が横浜の左腕・伊藤将司投手との2年生エース対決を制した。「横浜は応援も含めてすごいチーム。逆の展開はあり得るとしても、ここまで点差が開くとは思わなかった」。敬意を表する一方で、「勝ったから言えることかもしれないけれど、8敗した今までとは多少違う感覚はあった」と勝利の予感を口にする。
渡辺監督は敗戦後、前橋育英の印象を「しっとりとしたいいチーム」と語っている。「落ちているごみは拾わせるのではなく、気づいたから拾う…にしたい。日常生活も同じ。態度や規律などへの意識がいずれ野球につながる」。同じことをさりげなくやり続ける。「荒井監督流」の原点は、現役時代にさかのぼる。
投手だった高校では、県大会で2試合連続の無安打無得点試合を記録したが、1年後輩の山本昌投手(現中日)にエースの座を奪われる挫折も。社会人野球のいすゞ自動車では3年で投手を外され、毎年クビ候補の危機に直面。それでも都市対抗野球には7年出場した。「実績も技術もない自分には、練習しかなかった」。バットの素振りを毎日続ければ、成果に気づけるようになる。ごみ拾いも同じだ。
前橋育英のコーチ就任から、群馬に移り住み15年。あまり怒らない指揮官に「勝つ気がない」「甘い」と容赦ない批判が浴びせられてきたが、信念を貫いた。優勝校として「ここからがスタート」。心新たに、地道な日常を積み重ねていく。
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