オリジナルの人形を作り続ける 糸洲 歌子さん 塩浜在住 90歳
生きがいの人形を喜びに
○…自宅の居間には、これまで手掛けた人形がずらり。「ここにはざっと3千はあるかしら」と、いたずらっぽく笑う。知り合いの布団屋さんが分けてくれる多様な柄の生地が使われた人形は、可愛らしいまん丸の顔の周りにレースがあしらわれている。作った人形は、ボランティアセンターなどに配布。先月には地元で開催されたイベントの参加者500人分を提供した。「もうやめようと思っても、いつの間にか手が動いているの。お人形を作っている時が一番楽しいわね」
○…人形を作るようになって15年。きっかけは、義理の妹が友人からもらった、草履の鼻緒に挟んであった人形。ひと目見て「何て可愛らしい」と、10代の頃洋裁学校に通った後に紳士服の仕立てをしていた技術で、夢中で作りあげた。人形が増えるたびに誰かにあげてを繰り返し、これまで製作した数はゆうに1万体を超える。「皆に喜んでもらえるのが何よりもうれしいし、これが生きがい」。話している間も、手は休めない。
○…生まれも育ちも塩浜。20代前半から父親が自宅に構えた生花店で働いていたが、当時工場地帯として栄えた塩浜周辺では牛乳やパン、お弁当のニーズが高く、商店へと徐々に姿を変えていった。時代の流れとともに周辺の会社は移転し、「もう商売する場所としては、なかなかね」と、少し寂しげな表情を見せるが、今でも、時々は店を開ける。
○…2年程前、プレゼントした人形を持っていた男性が仕事中に車で事故に遭った。人形は車外に投げ出されたが、本人はケガなく済んだ。その男性は『身代わりになってくれた』と、新しい人形をお守り代わりにもらいにきたという。「人形をあげるときには『いい人にもらわれていきな』と撫でてあげるの」と、愛おしそうに”我が子”を掌に乗せ、目を細める。居間は、人形の傍らに飾られた、お礼のハガキや手紙の数々で賑やかだ。
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4月26日
4月19日