90代にして100号の大判作品を制作。「新構造展」に出展した 菅原 サキ子さん 大島在住 91歳
描き続けた「風景の記憶」
○…東京都美術館で9月24日まで開催中の「新構造展」に100号サイズ(112cm×162cm)の油絵作品『追憶のモンサンミッシェル』を出展した。カンバスと向き合って47年。体力の衰えもあり、年に1枚のペースで制作してきた100号サイズの絵画からは、今年で引退することを決めた。最後の一枚は、絵画歴を通じて得意としてきた薄塗のタッチを捨て、ゴッホを参考に厚塗りの画法に挑戦した意欲作。「最後だから『やっちゃえ』って思ってね」。10年前に訪れた、荘厳な石造りの修道院を、半年かけて描き上げた。
○…友人の勧めで絵画を始めたのは45歳の頃。東京タワーからベネチア、イスタンブールの街並みまで、旅先で出合った美しい景色を中心に、200以上の油絵作品を描いた。ピンクを生かした鮮やかな色使いを真骨頂に、91年の新構造展では東京都知事賞を受賞。「私の見た綺麗な景色の記憶を、後を生きる人にも伝えたい」。そんな思いを原動力に、絵画作品の制作を続けてきた。
○…北海道で生まれ、幼少期に埼玉県に転居。17歳で助産師の資格を取り、東京・都立築地産院などで経験を積んだ。28歳で川崎に移り住み、大島3丁目に「菅原助産院」を開業。85歳まで現役助産師として活躍した。取り上げた赤ちゃんは68年間で8000人にのぼり、町内には出産時から顔を知るご近所さんが何人もいる。引退後も町内会館での育児相談を通し、地域の子育てを支え続けた。
○…2人目の孫は、アメリカンフットボール日本代表の中心選手でもある菅原俊さん。高校時代から俊さんのファンで、今も年に20試合は現地で観戦している。孫の「追っかけ」を続けること、現在執筆中の自分史と、絵画の作品集をまとめあげること、個展を開催すること――。将来への希望は尽きることがない。「まだまだ、倒れるわけにはいかないわよ」。はつらつと、軽やかに言い切った。
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5月3日
4月26日