小学校教諭 岩崎 一氏 「忘れないこと、伝えたい」
小学3年生を受け持っていた震災時、自分の児童はほとんど帰宅した状態で、学校には高学年の児童と保護者が残っていた。風が強いとカタカタとなる窓も、その大きな音にいつもと違う気配を感じ、強い揺れで机に隠れた。余震も長く続いたが、揺れが収まると、校庭へ児童や保護者を誘導、校庭に並んだ。「特に慌てることもなく、いつもの訓練どおりでした」。職員が集まり、その後の対応を検討。何かあれば保護者が引き取りにくる、これも普段から決められていること。夕方過ぎには児童全員を引き渡すことが出来た。毎月行なっている避難訓練。「放送がなり、机の下にもぐり、落ち着いたところで列になって校庭に行き整列する」。なぜ毎月行なうの?なぜ黙るの?の問いに「命を守るため」と答えてきたが、それが文字通り実体験として、強く感じられる出来事となった。
週明けの月曜日、学校は休みとなったが、次の火曜日は通常通り授業を再開。その後、特別震災の話に触れることは多くないものの、朝の会や道徳の時間では、「今日で震災から1ヵ月が経ったね」「2ヵ月が過ぎた」とあまり刺激しない程度に話をし、児童は頷いて聞いている。「物事には忘れていいことと忘れていけないことがあるとしたら、この震災は忘れてはいけないこと。そんなことを伝えていけたら」。
震災以降、大きく変わったことは、「特別なことはないのです」という。が、子どもたちが物事一つ一つを丁寧に、一生懸命にするようになったと感じる場面が増えた。「朝早くまだ皆が集まらない時間だったら、電気をつけない。使っていない電気はこまめに消す」など節電への意識や、「給食は残さず食べよう」「物は大事に使おう」などの日常生活。当たり前のことだが、子どもたち自身が震災を実体験したからこそ、出来る限りの行動へと繋がっていると感じる。さらに、子どもが主体となって駅前に立ち義援金募金を募るなど、自主的な行動も耳にした。
日常からかけ離れたような特別大きなことでなくてもよい。少しでも良いからいつまでも忘れずに気に留めて、些細なことでも自分から行動できる子どもになって欲しい。
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