町田版 掲載号:2018年1月1日号
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『伝える』とは何だろう 己を無にし、『伝える』芸 狂言師 山本則俊

文化

 大蔵流山本家には狂言演目が約200番あるという。「狂言には、人間の営みが全て含まれている。争いや妬み、愛憎、いじめ、生死など狂言は面白おかしく、人間の愚かさ、滑稽さを教えてくれる。『オレオレ詐欺』を扱った演目もある」と三世山本東次郎を父、四世山本東次郎を兄に持つ則俊氏は話す。

 狂言はセリフと仕草の対話劇。室町時代に成立した。2008年には世界無形遺産に登録された。

 約650年。ほぼ形を変えず『伝えて』きた。能と同じく世界最古の芸能だ。

 4歳の誕生日から稽古が始まった。「夏休みが来ると友だちは喜んだけど、嫌だったね」と振り返る。休みのときは一日中稽古に明け暮れた。立ち居振る舞いの基礎を叩き込まれる。教えられた所作をしても、「違う」と一言。どこが違うのかも分からないまま、何十回、何百回と同じ所作を続ける。その度に「違う」。身体の動きを確かめるために裸で行った。何が違うのか分からないが続けていくうちに、「そう、それ」と声を掛けられる。身体が動きを覚えていった。

 『伝える』とは「自分を無くすことかな」。狂言は人間の本質を描く。だから万人が自分に置き換えられるように具体的になる一歩手前で劇が進んでいく。「観てくれる人それぞれが経験や立場を違うように自分なりの解釈をしてもらうことが大切」という。650年、本題が伝わるように言葉や所作をそぎ落としてきた。「自分を出したら、余計なことが増えて、伝わらなくなる。狂言じゃなくなってしまう。父に教えられたことをそのまま舞台の上で演じるだけ」

 狂言の解釈は観る人に委ねられるところが大きい。「帰り道に、『あっ、そういうことだったのか』と思っていただけると、うれしいですね」。数年後に急に狂言の一幕を思い出すことも多いという。年間、200回ほど舞台に立つ。「全て一期一会。一生に一度しか観ない方もいらっしゃる。『その方の前で演じられるのも最後かも』と思って全身全霊で演じるしかない」

 息子さんが2人。そしてお孫さんが3人。芸を受け伝えることも大事な役目だ。「父に教わったように伝えようとするけど、難しいですね。父の偉大さを改めて感じます」。現在75歳。体力は年々衰えていく。「これまでの稽古で培ったものしか表現できません。自然と身体から出てくるものをこれからも表現し続けるだけです」
 

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