今春、東京工芸大学を卒業した佐々木麻衣子さん(25)が制作した映像作品『紅』が、第57回科学技術映像祭で、最優秀賞である内閣総理大臣賞を受賞した。NHKや民放のドキュメント番組を抑えての受賞は快挙。
科学技術映像祭は、科学技術の普及と向上を図ることを目的に1960年に始まった映像の祭典。日本科学技術振興財団らが主催し、今年はテレビ局などから44作品が出品された。
今回、最優秀賞を受賞した『紅』は、佐々木さんの卒業研究として2年がかりで制作された。黄色い紅花の花弁にわずかに含まれる赤色色素「紅」の伝統的な精製方法を丁寧に描いた、16分の35ミリフィルム作品。小道具一つ一つにもこだわった映像は「学生の作品として秀逸なばかりでなく日本の美を科学的な見方も踏まえて紹介する稀有な作品」として高く評価された。
きっかけは「紅をさした唇は、なぜ透明感のある美しさになるのか」と疑問を抱いたことからだ。都内青山の紅ミュージアムへ足を運び、紅の歴史的背景などについて、取材を進めていった。紅花の生産地・山形にも、矢島仁准教授と通ったが、肝心の紅染めの技術は職人だけの伝統技法であり撮影は断られてしまった。
そこで、自分たちで色素を取り出そうと、学内で実験を開始。けれどもなかなか上手くいかず、再び山形の職人のもとへ。10回以上通いつめ、打ち解ける中でなんとかヒントを入手。その通りに実験を行うと、上等な紅の証である乾くと緑色になるものが完成し、撮影に成功した。
佐々木さんは、「色がキレイだからと始まった撮影。まさかこんな賞をいただけるとは思ってもみなかったので、未だに実感がないです」とはにかみながら話す。「自分が撮りたいと思ったものを撮った作品。現像が終わってから、とても満足しました」と続けた。
作品は、4月29日(金・祝)に相模原市の杜のホールはしもとで開催される第1回さがみ人間未来フィルムフェスティバルで上映される。
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