厚木税務署の署長に就任した 高橋 雄治さん 川崎市在住 59歳
マルサの男、初心の地へ
○…「また厚木に戻れたことが嬉しく、光栄で、責任を改めて感じます」。署長としてこの地に戻るのは35年ぶり。20代の駆け出しの頃に厚木税務署に配属され、初めて納税の相談に応じたり調査の現場に出始めた。申告書の書き方などを解説し、相手方に言われた「ありがとう」の一言が忘れられない。当時はまだ気持ちにゆとりがなかったのか、厚木の街を歩いた記憶が薄い。今は通勤の時に大好きな「いきものがかり」を聴く。一人のファンとして、本厚木駅は彼らが演奏した聖地であり、風景は以前と違って見える。
○…20年以上を東京や大阪国税局の査察部で過ごした。「ガサ入れ」が印象的な通称・マルサである。悪質な脱税者を摘発する最前線を振り返り、言葉少なげに「大変でしたが達成感があった」。利益を享受しているのは一体何者なのかを毎日考え続けた。今でもまぶたの裏には、正しく申告する人々の姿がある。「脱税は犯罪であり、不公平は許してはなりません」ときっぱり。「ブツ」を押収し、膨大な書類の文字列をなめるように読むうちに、1行ずつ定規をあてる癖がついた。苦労を共にした定規は先輩譲りの品で、今も愛用している。
○…「利便性のよい仕組みをもっと発信したい」。最近はe─Taxといったスマホ活用も進み、税務署に通う手間も減らせるようになった。消費税に関するインボイス制度導入も控え、広報への意気込みは人一倍。一方で署内では同僚への声かけが日課だ。マスク姿で表情を読み取りづらいからこそ欠かせない。「働いてよかったと思える職場が目標です。職員をもっと知らなければ。迷惑かもしれないけれど」と苦笑。外へと開いた税務署に、新しい風がそよいでいる。
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