かつての里山の姿を絵屏風に――。葉山町の木古庭町内会(伊東強会長)と上山口町内会(倉林彰会長)が地域のお年寄りの記憶を頼りに絵屏風を作成する「ふるさと絵屏風プロジェクト」に取り組んでいる。今では見られなくなった昔日の姿を後世に残そうと計画されたもので、両町内会では来年末の完成を目指し、制作を進めている。
計画が立ち上がったのは昨年9月。両地区に隣接する山間部を所有する大和ハウス工業(株)から提案を受けたのがきっかけで、同社支援のもと制作を進める。「近代化に伴う開発でこの辺りの景観もずいぶん変わった。昔の姿を形に残そうという話になった」と倉林さんは話す。
ふるさと絵屏風は単に景観だけでなく、音や匂いなど「五感の記憶」を落とし込むのが特徴で、お年寄りの様々な記憶を集約し、当時の生活ありのままに一つの絵に落とし込んで行く。これは「心象図法」と呼ばれる手法で、滋賀県立大学教授の上田洋平さんが考案したもの。今年4月には上田さんを招いたシンポジウムが行われ、地域のお年寄りおよそ70人が集まった。
当日の公開聞き取りでは「昔は水道がなかったから、子どものころ井戸まで水汲みに行った」「昭和30年ごろまで県道も整備されてなくてバスも木古庭の駐在所あたりまでしか走ってなかった」「よく小さい蜘蛛を闘わせて遊んだ」など様々な思い出話が飛び交った。
今後はアンケートや聞き取りで集めた意見を整理。開発が進んだ1950年代後半の話題を中心に、絵に落とし込む素材を絞り込むという。下絵、絵図制作など段階的に工程を進め、完成すれば高さ180cm、幅350cmの大作に仕上がる予定だ。
「どんな絵屏風になるか分からないが今から楽しみ」と伊東さん。また、絵画制作には地元小学校児童の協力も仰ぐ予定といい、「昔の記憶を持つ人と、将来を担っていく人との交流のきっかけにもなれば」と伊東さんと倉林さんは声をそろえた。
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