逗子市在住のセーラー畑山絵里さん(株式会社エス・ピー・ネットワーク所属)が、東京五輪セーリング競技「ナクラ17級(混合)」で日本代表に内定した。「周囲への感謝を胸にまずは決勝進出を目指し、メダルを狙っていきたい」と意気込んでいる。
畑山さんはペアを組む飯束潮吹さんとともに、2月15日、代表選手に内定した。
「ナクラ17級(混合)」は、前回のリオ五輪から追加された新しいクラス。長さ約5m、幅2・5m、高さ9mの双胴艇で水中翼がついており、最高速度は時速45Kmにも達する。五輪種目史上、最速艇とされており、スピードに乗ると海面から浮き上がることから「空飛ぶヨット」とも呼ばれている。
競技の虜に
和歌山県出身の畑山さんは県立星林高校2年の時、顧問に誘われヨット部に入った。全くの初心者で、「一週間、船酔いに苦しみご飯も食べられなかった」が、慣れるとすぐに、風を受けて進む楽しさにのめり込んだ。
周囲のアドバイスもあり、大学でも競技を続けた。学生最後の大会となった4年時の女子インカレでは、最終日までダントツのトップ。しかし、プレッシャーから最終日にミスが続き、優勝を逃した。「今までで一番悔しかった経験」。両親との約束を守り、部活動に励むかたわら教職課程を修了。就職も考えたが、コーチから「競技を続けなさい」と助言され、都内の企業に所属しながら選手活動をする選択をした。葉山新港が練習拠点になり、逗子に引っ越してきたのが6年前。東京五輪を視野に入れながら、470級でリオ五輪を目指していた。
転向機に成長
しかし、リオ五輪の代表選考で次点となり、出場することはできなかった。大きな目標がなくなりチームも行き詰ってしまったという。
一度、レースから離れることにしたが、ヨットを嫌いになったわけではなかった。葉山町にある「海洋サービス」で船体の修理などに従事するかたわら、学生たちを教える生活を半年ほど過ごした。そんな時、飯束さんから「ナクラ」への転向を誘われた。「スピードは出るし、470級にはない動きや仕組みがあって面白かった」。もう一度、勝負の世界へ挑もうと情熱に火がついた。
2017年から世界各国の大会を転戦し、昨年から五輪選考レースとなる3大会に出場した。今年2月にオーストラリアで行われた最終戦まで、ライバルペアに負けていたが、最終戦で挽回。ポイントで同列に並び、レースでの順位で上回ったため代表の座を勝ち取った。
レース期間中は「ものすごいプレッシャーだった。決まった瞬間は思わず『苦しかった!』と叫んでしまった」と振り返る。しかし同時に自身の成長を感じたとも。「大学時代は大事なところで緊張に押しつぶされてしまった。今回はやるべきことをしっかりできた」。「ナクラ」へ転向する際、娘のことを思って反対した両親は泣いて喜んだという。「これまで応援してくれた全ての人に恩返しができた。それが何より嬉しい」
現在は五輪会場である江ノ島を拠点に練習を積んでいる。「私達は風が強く吹いたほうが得意。どんな状況にも対応できるよう、準備していきたい」と前を見つめる。「大学で悔しい思いをしたことも、一旦競技を離れたことも、何ひとつ無駄なことはなかったと思っている。良いパフォーマンスをして結果を出し、ヨットをより多くの方に知ってもらえたら」と笑顔で語った。
東京五輪では、各国の代表20チームが出場。6Kmの距離を約30分かけて競い、1日3レースを4日間にわたって行う。順位によるポイントを争い、上位10チームが「メダルレース」と呼ばれる決勝に駒を進めることができる。
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