一見、緑豊かに見える葉山の山。しかし、かつて人々の暮らしに根付いていた里山や森林は半世紀以上放置され荒れ放題となり、倒木の危険や生態系への影響も危惧されている。こうした状況を打破しようと、地元工務店や家具職人、自然保護活動に汗を流している町民などが集まり、「一般社団法人葉山の森保全センター」を設立した。行政やボランティアの力だけに頼らず、現代版里山モデルを確立することで、持続可能な保全活動を目指す。
葉山の森保全センターは今年5月に設立した。上山口の伝統工法専門工務店「藤本工務店」の藤本嶺さんが代表理事を務める。
国産材木を用い、釘や金具を一切使わない伝統工法を駆使し、その知識や技術を次世代や海外に広める活動にも力を入れている藤本さん。自社で製材所を持つようになってから、日本の森が置かれている状況への関心が強くなったという。「このままでは日本の森が大変なことになる、と色々な場所で言ってきたが、何か行動を起こさなければとずっと思っていた」と語る。
忙しい本業のかたわら団体設立のきっかけとなったのは、町在住で株式会社アップサイクルジャパン代表・西村正行さんとの出会いだった。西村さんは廃材を使った家具の制作やリノベーション、余剰食材を使ったレストランの経営などを行っており、持続可能な社会の実現に向けたビジョンが一致した。
昨年春頃から準備を進め、団体の理事メンバーには長年、地元の山の整備に携わっている二子山山系自然保護協議会の会員らが名を連ね、中心メンバーには伐採技術やIT、里山整備の豊富な経験を持つ個性豊かなメンバーが集まった。
拠点整備に注力
現在、メンバーたちは保全活動の「モデルケース」となる活動拠点の整備に力を入れている。「荒れ放題の状態が普通になっている今、自分たちがしっかり手を入れた理想の状態を内外に発信したい」と西村さんは狙いを語る。
先月24日には、上山口にある藤本さんと西村さんが所有する土地で作業が行われた。アズマネザサなどが繁茂するなか、土地の境界を確認しながら作業を進めていた。ゆくゆくは、拠点を災害時の避難所としても活用したい考えだ。「間伐材を薪にすれば、いざという時に暖が取れ、風呂に入れるし調理もできる。その備えをしつつ、普段は子どもたちが森に親しむ遊び場にしたい」とメンバーたちは意気込んでいる。その他にも、▽登山道周辺の危険木・倒木処理、道の整備▽活用できていない森林資源の発掘・活用▽放置竹林の整備を団体のミッションに掲げている。
町の半分は森
18年4月に策定され、10年間の取り組みについて定めた「葉山町森林整備計画」によると、町の総面積は1704ヘクタールで、民有林地はその半分以上の869ヘクタール。そのうちスギを主体とした人工林は164ヘクタール(19%)で、県平均よりかなり低い数字としつつ、各地に点在しているため整備の共同化が難しい点を特徴に挙げている。町ではかつて炭焼きが盛んにおこなわれ、木材需要も大きかった。しかし化石燃料の普及とともに、ニーズは激減。町産業振興課によると、葉山町森林組合は2008年に解散した。
「保全センター」理事で、二子山山系自然保護協議会の役員も務める田中直彦さんは「葉山の森は半世紀以上放置されている一方、100年生の樹木が増えて最近ではナラ枯れによる倒木の危険性も高まっている」と指摘。近年、風水害が激甚化するほか、ハイカーの数も増えていることから、人的被害の発生も危惧する。
藤本さんは「町の半分以上が森なのに、その維持管理がボランティア任せでは限界がある。山でしっかりと稼いで事業が回る仕組みを作り、豊かな葉山の森を将来に引き継ぎたい」としている。
同会は現在、活動を支援する賛助会員や寄付を募っている。また、「山を所有しているが、管理に困っている町民の方はお気軽にご相談ください」と呼び掛けている。
詳細や問い合わせはホームページ【URL】https://www.hayamanomori.org/
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