商工業者の「応援団長」として 商工会議所会頭インタビュー
本紙では新春特別企画として、商工業界のトップ、小田原箱根商工会議所の鈴木吉兵衛会頭((株)美濃屋吉兵衛商店代表取締役社長)にインタビュー。2012年を振り返ると共に、新年の抱負や期待などについて語ってもらった。
―あけましておめでとうございます。2012年は小田原・箱根の商工業にとって、どのような1年でしたか。
「あけましておめでとうございます。2012年は『3・11』の東日本大震災から1年が経ち、景気が回復傾向になるのでは、と期待していましたが、むしろ12年の方が、元気がない、厳しいという印象でした。震災のあった11年は自粛ムードもありましたが、ゴールデンウィークを境に、購買力も観光客も少しずつ戻った気がします。12年はデフレ経済の影響で、利益のアドバンテージを低下させる悪循環が消えることがなく『今年こそ』と思っていた気持ちを萎えさせた気がします」
―会頭は被災地にも頻繁に足を運んでいますが、現地の状況はいかがですか。
「今回の震災は人の価値観を変えたと思います。私自身の商売の中から、売上の一部を届けに何度か気仙沼(宮城県)に行っていますが、中身はともかく見た目は震災当初から何も変わっていませんでした。昨年は復興予算の使われ方が問題になりましたが『冗談じゃないよ』と憤りを感じました。決めることを決め、もっとスピード感を持ち、出来ることから早く実行して欲しいと思います。
震災を経て、改めて小田原は観光商業のまちであることを痛感しました。直接・間接を問わず観光業に何らかの関わりを持っている商業者が多く、観光客の減少は大きく影響します。
観光振興こそ流動客数を増やす一番の近道です。観光振興について、観光客(流入人口)を増やすため、多くの観光イベントを集約し、大きなものにしていく必要もあるのではないかと感じています」
観光客増にイベント集約も
「昨年、青森県の弘前城を訪れました。桜の名所でゴールデンウィークに行われるさくら祭りには毎年250万人が訪れるそうです。
翻って小田原最大の祭り・北條五代まつりでも16万人。差は歴然です。
桜の見事さでは小田原だって弘前に負けていません。例えば、桜舞散る中、武者隊が行列しても良いのではないでしょうか。北條五代まつりも5月3日にこだわる必要もないのでは、と思います。行列がパレードした後に、城内で流鏑馬をやってもいいでしょう。大事な観光資源を、市外から観光客を呼ぶために集約し、市民が楽しむためのイベントと明確にわけ、スクラップ&ビルドした方が良いのではないかと考えます」
−−商工会議所の産業まつりは昨年イメージが変わりましたね
「産業まつりはあくまでも各部会のPRの場。あまり堅苦しい内容では、つまらないですが、近年はバザーの要素が強くなっていました。そこで昨年は生業体験などを取り入れ、小田原ならではの体験をしてもらい、市外からも多くの参加を得ました。今後も試行錯誤を繰り返し、小田原の優秀な地場の産業や職人の技術、大規模工場の見学など、市外から多くの人に来てもらい、小田原の良さを知って欲しいと思っています」
−−昨年2月、商工会館の移転用地として小田原少年院移転後の跡地を、との要望を提出されました。今後の方針をお聞かせ下さい
「『3・11』の時は商工会議所に在所していましたが、ひっくり返るのではないかと思いました。(商工会議所の移転は)市役所の周辺を官公庁のエリアに、と言う方向性もあるので、少年院跡地を要望しましたが、まず市の購入が大前提になるので、その後支援して頂けるかどうかにかかってきます」
−−JTの跡地は大型商業施設の噂がありますが
「JTの跡地利用については、ワンストップ型店舗の新規出店を規制する要望をだしています。市内には事業継承すらままならない中小企業が多数あり、歯を食いしばって頑張っています。万が一、JT跡地にショッピングモールのような商業施設が出来たら、ダメージはかなり大きいです。法的に阻止するのは困難かもしれませんが、行政とも協力し、小田原の商業界が生き残るために何とかしたいと思います」
−−総選挙がありましたが新政権に期待することは
「スピード感を持って政策を打ち出し、実行してくれる人や政府になるよう大いに期待します。そうでないと国だけでなく地方も耐え切れなくなってしまいます」
−−2013年は会頭として1期目の集大成の年となりますが
「任期最終年だからと言って気張ることなく、商工業者の応援団として、これまでの2年間と同様まちに出て、皆の声を聞いて『会議所に入っていて良かったな』と言われるようにしたいと思っています。
かつて小田原には『重鎮』と呼ばれる人がいました。今井徳左衛門さん(かのや今井本店・元商工会議所会頭)や廣澤冨正さん(だるま料理店・元商工会議所会頭)など。「あの人が言うのなら」と言う人が今は少ないような気がします。
今は様々な面で小田原自体が変貌していく時期ですので、商工会議所として、行政や各種団体に責任ある意見や提言をしていきたいと思います。そのためにはまちに入り、自分自身で色々な意見を吸い上げ、肥やしにし、会議所として皆と論議をして、提言や意見をだしていきたい。それはこれまでと変わらずに続けていくつもりです」
「責任ある意見、提言」も会議所の役割と鈴木会頭
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