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町田版 公開:2016年3月24日 エリアトップへ

町田市立博物館より【17】 青磁に泣く 学芸員 矢島律子

公開:2016年3月24日

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米色青磁瓶 南宋官窯12〜13世紀高さ21.6cm 常盤山文庫蔵青くない青磁と思いきや、何層にも掛けられた最下層の釉は青く発色しているので、ほんのりと青い、不思議な青磁
米色青磁瓶 南宋官窯12〜13世紀高さ21.6cm 常盤山文庫蔵青くない青磁と思いきや、何層にも掛けられた最下層の釉は青く発色しているので、ほんのりと青い、不思議な青磁

 開催中の『常盤山文庫と町田市立博物館が語る 中国陶磁うつくし』展の目玉の一つは「青磁」です。青磁の展覧会については以前より諸先輩から「難しい。青磁だけはうまくいったためしがない」と聞いていました。青磁は陶磁器専門学芸員なら一度はやってみたい中国陶磁の女王。案の定、夢の青磁は麗しい悪魔、その難しさには泣きました。

光を宿す

 青磁は唐三彩や染付のように顔料で色づけしたのとは違って、釉(=うわぐすり=表面を覆うガラスの膜)に自然に含まれる微量の鉄分を青く変化させたものです。また、釉に含まれる小さな気泡が光を乱反射して複雑な釉調になります。湖や空の色が青く見えるのと似ており、光の加減で異なる表情を見せます。釉に大気の光を宿す、神秘的な焼きものです。この効果を狙って、素地や釉の成分、釉の掛け方、窯の焚き方を、中国人は紀元前1500年の昔から約2500年間工夫を重ねて芸術にしました。その色を「千峰の翠色を集め得て来る」(千の深山がたたえる青緑色を凝縮した色)とか、「雨過天晴破雲」(雨上がりの雲の切れ間から見える空の色)と称えます。その不思議な魅力は、日本はじめ世界中を1000年以上も虜にしてきました。

 本展では米色青磁など21点の青磁が展示されています。これらを図録に掲載しましたが、その色出しに四苦八苦しました。みんな色が違うのですが、その違いを印刷で正しく出すことの困難なこと。「違う、違う。こんな色じゃない、これじゃ緑のペンキだ、微妙に黄を減らして」とか、「だめだめ!もっと淡いの。ほんのり青みを帯びた灰色。藍が強すぎる」。色校正(図版の色を実物に近づけるよう修正する作業)のたびに悲鳴を上げました。

大胆な照明

 こんな風でしたので、展示を考えると夜も眠れませんでした。当館の照明で青磁の色を正しく見せられる自信がまったくない!追い詰められた筆者は、思い切って自然光を取り入れました。普通、博物館の展示室は紫外線を忌むものですから、自然光を入れるなど論外ですが、実は、陶磁器は紫外線の影響を受けません。大阪市立東洋陶磁美術館には一部屋だけ自然光を入れる部屋を作って、汝窯青磁と龍泉窯青磁を展示しています。なぜか当館には開かずの鉄扉が大展示室の中庭向きにあり、通常は開けません。筆者はそれを思い出したというわけです。

 日本では青磁は「曇りの日に障子越しの明かりで見るのがよい」といわれています。障子を立てるかどうか迷います。ここに飾った米色青磁が持つ二重貫入(釉のひび、直線的なひびと鱗状のひびが入っているのが官窯青磁の特徴とされる)は光が強く当たった方がよく見えるので、障子はとりあえず、やめています。

 というわけで、天気や時間によって様々な表情を見せる青磁を是非見に来てください。朝の光が私は好みです。桜の季節には中庭に吹き込む桜の花びらを背景に御覧あれ。
 

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