旭区・瀬谷区 人物風土記
公開日:2016.11.10
第8回「日本新薬こども文学賞」物語部門で最優秀賞を受賞した
木村 セツ子さん
白根在住 84歳
終わりなき作家人生
○…「書けたことで驚いたのに、入賞したことには、もっと驚いた」。児童文学作家として多数の著書があるが、絵本の物語を書いたのは初めてだ。「絵本は気楽に書けると思ってた」。だが、短い文章で物語を生み出すことは、予想以上に大変だったという。そんな中、励ましてくれたのは2人の友人。「『木村さんは死ぬまで書け!』って言われたの」。友人のエールも大きな力になった。
○…1982年、『燃える川』で児童文学作家としてデビュー。元は、中学校の国語科教員で「生徒に読ませたい本を作ろう」と作家への道を歩むことに。『3年2組は牛を飼います』は第54回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にも選ばれている。今回の『ぼくしらないよ』は、小さいころ寝相が悪かった5歳下の妹のことをイメージして、あたためてきた物語。「妹は蚊帳から出てしまうほど、寝相が悪かったの」と幼い日々を懐かしむ。
○…5年前に脳梗塞を患った。得意だった手芸や折り紙も難しくなってしまったという。「脳の病気になって、もう自分はダメになったと思った」。しかし、「ものを書く」ことだけは違った。「書けるとは思わなかったし、書こうとも思わなかった」というが、「ペンを持つと、書けるの。物語も手紙も、書けるの。本当に不思議」。以前はパソコンのキーボードで原稿を作っていたが、今はペンで書いている。くたびれてしまうこともあるそうだが、自然とペンは動く。
○…子どものころから本が好きで、学級文庫は1冊残らず読み、家でも夜中にずっと本を読んでいたほど。作家として活動し、今年で34年。「これが最後の本になるかも。でも、気分と体の調子で、また書きたくなるかもしれない」と笑う。これまでの作品で、満足したものはないという。「締め切りの前日まで直していく。それでも、うまくいったと思うものはない」。本への情熱は揺らがない。
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