昨年30周年を迎えた「永谷天神ばやし」の会長を務める 深野 英男さん 上永谷在住 72歳
背中で奏でる伝統の音
○…「子どもの頃、お正月に篠笛と太鼓の音が聞こえてくると慌てて家を飛び出したものだった。少し怖がりながらも、獅子舞が楽しみで」―。かつてはどの地域にも受け継がれていたお囃子は、時代の流れとともに衰退。永谷でも娯楽の多様化などの影響で昭和30年代に活動が途絶えた。しかし55年、永谷に再びお囃子を取り戻そうとする声が高まるなか、所属していた青年会の仲間5人で「永谷天神ばやし」を結成。未経験ながらも「地元にお囃子がないのは寂しい」という気持ちが背中を押した。
○…昨年で結成30周年を迎え、今では正月や夏祭りの時期になると地域のイベントにひっぱりだこだ。大晦日の夜から年明けにかけては、永谷天満宮の神楽殿で初詣の参拝客を前にお囃子を披露している。「30年間紅白歌合戦を見ていない。家でゆっくり過ごすのもいいけれど、やっぱりこっちが気になってしまうから」と、静かな語り口調のなかにも、お囃子にかける情熱が垣間見える。
○…「ここが一番いいね」と、生まれ育った上永谷をこよなく愛する。その理由にあげるのが気の合う仲間の存在。古くからの知り合いが多く住み、お囃子のメンバーにも永野小学校時代からの幼馴染がいる。「私なんかに何もできることはないけれど」と謙遜しながら、「上永谷には励まし合える仲間がいる。皆必要な人達ばかり」と力強く語る。
○…現在のメンバーは9人で60代から70代が中心。悩みは後継者不足だ。永谷で二度とお囃子を絶やしたくないとの想いは強いが、かといって積極的な勧誘もしていない。「自分達が一生懸命活動すること。その姿を見てもらうことで、輪は広がっていくのではないか」と、結成以来毎週火曜日に集まって稽古を続けている。「この前、稽古場の近所の方から、火曜日に聞こえてくる音色を楽しみにしていると言われたんです」。想いは地域にゆっくりと、でもしっかりと伝わっている。
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