横浜市は10月、ひとり暮らし高齢者に対する見守り活動の充実に向けたモデル事業を始めた。これは市が保有する75歳以上のひとり暮らし高齢者の個人情報を民生委員と地域包括支援センターに提供し、従来訪問できていなかった高齢者をフォローしていくもの。漏れのない見守りを目指し、平成24年度には全市的に取り組みたい考えだ。
事業をスタートさせたのは港南区のほか、神奈川、金沢、栄、瀬谷、都筑、鶴見、戸塚、緑の9区25地域。市は10月、各区に該当者の情報を提供し、区と民生委員、同センターで情報を整理した上で12月から本格的に訪問を始める。その後、市が各区の実施結果を集約し、提供するひとり暮らし高齢者の年齢情報区分の可否や、民生委員が該当者の情報を事業実施前にどれだけ知っていたかなどを把握し、本事業のあり方につなげる方針だ。
民生委員とは、自治会町内会の推薦と厚生労働大臣の委嘱を受けた地域住民が担い、地域福祉増進のために活動するもの。高齢者の見守りについては従来、個人情報保護の観点から民生委員が地域とのつながりを頼りに自力で探すのが現状だった。そのため限界があり、市には以前から情報提供の要望が出されていた。
これを受けて市は、21年に策定した第2期地域福祉保健計画に「個人情報保護制度と両立する地域の情報共有の手法」づくりに取り組むと明記。今年3月に個人情報保護審議会で承認を得て、本人の同意なく個人情報を提供できる例外をつくった。市によると、一定条件下での個人情報提供は昨年度時点で、19政令市中15市で行われているという。
野庭団地が対象
区福祉保健課によると、港南区内でモデル事業が行われる地域は野庭団地。これは区と区内各地区の民生委員代表者による話し合いにより決定されたもので、団地という特性上、全体の把握がしやすいことが要因だったという。
また、情報提供の対象が75歳以上に設定された理由については、市の考えによるものとしたうえで、「あくまでもモデル事業として仮に線引きしたもの。事業実施後の結果をみて、今後の検証材料にしていきたい」と話した。
港南区民生委員児童委員協議会の松井佑子会長は、「東日本大震災以降、民生委員としての役割を果たすためには、これまで以上にひとり暮らし高齢者の把握が求められていた」と語る一方、「これまでは仲間同士の口伝えしか知る術がなく、情報収集に限度があった。これでかなりの人数が分かるようになる」と事業実施を評価。普段から実施しているという見守り活動の幅が広がるほか、「助けを求めている高齢者でも、自分からは言い出しにくい場合もある。そういった意味でもよかったのでは」と話していた。
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