4月1日付で港南消防署の署長に就任した 名取正暁(まさあき)さん 神奈川区在住 53歳
「百聞百見は一験にしかず」
○…消防職員になって30年以上だが、署に勤めるのは港南署で4カ所目。これまで横浜市消防訓練センターで教官を務めたほか、市都市計画局への出向でみなとみらい21地区の開発に携わり、土地の売却や企業誘致に奔走したことも。「いろいろな部署で経験を積ませてもらえた。貴重で、ありがたいこと」。署長就任は初めてだが、「気負わず、焦らず。じっくりまちのことを知っていきたい」。
○…様々な部署を歩いてきたからこそ、「縁」を大事に思う。教官時代の教え子と現場で再会することも多く、「今も”教官”と呼ばれるのは嬉しい」と笑顔で明かす。着任後のあいさつでは、「前向きに”志事(しごと)”を」と署員らに呼びかけた。「志をもち、チャレンジを大事にしてほしい。壁にぶつかり、跳ね返されることもあるが、それは無駄なことじゃない」。一方、市民に対しては自助の力を養うことを期待しており、「訓練でやっていないことは実践できない。だから百聞百見よりも、できるだけ多くの人に”一験”を広めたい」
○…生まれ育ちは、現在も住まいを構える神奈川区。消防士だった父の背中を見てきたが、「いざという時に家族を置いていってしまう」と、将来の選択肢には入れていなかった。転機は、死者・行方不明者299人を出した1982年7月の長崎大水害。アルバイト仲間の家族が被災したと現地から電話を受けた。家族のうち母親は命を落としてしまったが、弟は消防士に救命されたと聞き、「いざという時、人の助けになる仕事」と消防職員の魅力を実感。父の勧めも受け、22歳で消防職員となった。
○…週1回のテニススクールでは、異業種の仲間との時間が楽しみの1つ。家に帰れば20代になる2人の娘がおり、「一緒に買い物にも行きますよ」と優しい父親の顔を見せる。「大好きなまちが災害で姿を変えるのは見たくない」。大切なものを守るため、事前の備えに惜しみなく力を注ぐ。
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