薩摩琵琶の奏者として区内小学校での弾き語りを続ける 田中井 琇水(しゅうすい)さん(本名・恵治) 芹が谷在住 68歳
広げ続ける琵琶の響き
○…芹が谷小学校や芹が谷南小学校などで毎年、6年生の音楽の時間に薩摩琵琶の弾き語りを披露し続けている。芹が谷小学校では娘が6年生だった時から24年も続いている。演目は平家物語などの古典のほか、子どもたちも楽しめるようにとおとぎ話も披露する。「物語の中にある教訓は現代にも通じるもの。聴いて何年か経った後にも、自然と心に残っていたらいい」
○…頼まれればどこへでも弾きに行くという積極的なスタイルで活動を続けてきた。鶴岡八幡宮や中野サンプラザなど様々な場で琵琶の音を響かせ、また日本舞踊や生け花といったジャンルの違うパフォーマンスとの共演も少なくない。「より多くの人に感動を伝え、後世に残していくことが師匠への最大の恩返し」。今春には海を渡り、米国の美術館や高校にも音を届ける。
○…琵琶との出会いは約40年前、目の悪い母のサポート役として琵琶奏者・中谷襄水(じょうすい)さんの教室に通っていた。初めて足を運んだ舞台で、練習とは違う師匠の気迫のこもった弾き語りを目の当たりにし、「こんなにも素晴らしいものだとは」と弟子入りした。稽古場は野毛の飲み屋の3階にあり、先輩の後で夜11時ごろから指導を受けた。師匠の別荘では夜通しで稽古をしてもらったことも。「そのまま朝方になったら、今度は皆で釣り。可愛がってもらったよ」。今では亡き師匠の跡を継ぎ、錦心流琵琶一水会の会長として小学3年生から80歳までの弟子を抱える。
○…山形県出身。3人の妹の他に2つ上の兄がいたが幼くして他界したため、親に楽をさせようと早くから働き始めた。芹が谷に家を建てたのは20歳の時。当時自宅の裏には牧場が広がり、「絞りたての牛乳や、新鮮な卵を買ってきたものだよ」と懐かしむ。今は公園になっているその場所で、休みの日には2人の孫娘を「じいじ」の顔で見守る。「たった1つでも、生涯楽しめるものを探してもらえたら」と優しく願う。
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