今年に入ってから７月末までの時点で神奈川県内での「振り込め詐欺」被害額は28億円にのぼり、過去最悪だった２０１３年の被害額約41億円を上回るペースだ。一方で、港南警察署は金融機関、コンビニエンスストアとの連携を強化。区内では被害額が減少するなど一定の成果もみられる。
「振り込め詐欺」の被害は全国、神奈川県内ともに増加が止まらず、県内では１月から７月末までに９６２件（昨年同期比３８６件増）、28億１３８２万円（同９億４９７万円増）の被害が発生している。
また港南警察署の担当者は、「５月、６月は東京を抜いて、神奈川が被害件数で全国ワースト１位だった」と話しており、神奈川県警本部も全署に対策を求める「異常事態」に。港南区内でも、昨年同期比で２件増となる21件（８月６日時点）の被害が発生しているが、被害額は３３６２万円減の２４５０万円にとどまっており、１件当たりの被害額は大きく減少している。
その理由の１つとして考えられるのが、港南署と区内金融機関、コンビニエンスストアとの連携強化だ。従来も、多額の現金引き出しや携帯電話を使用しながらＡＴＭを操作する人などに声掛けをするよう要請してきたが、「お客さんに、お金の使い道を確認することはなかなか難しい」と港南署の森昌信副署長は話す。「『私のお金なんだから、私の勝手でしょ』と引き出してしまう人も少なくないのが実情」という。そこで「怪しいと思ったら早い段階で警察に通報してもらうことで、お店の負担も減り、協力してもらいやすいはず」と、港南署は５月から警察官に区内を常時巡回させ、通報があれば金融機関やコンビニに速やかに駆けつけられる体制を整えた。
その後、区内では５月28日から７月22日までの約２カ月間、振り込め詐欺の被害は１件も届けがなく、「区内の金融機関、コンビニによる協力が、水際での被害阻止につながったのでは」と森副署長は手応えを話す。阻止件数も昨年１年間で17件だったのに対して今年はすでに33件に上っている。
再び「オレオレ」増加
だが同時に、区内への振り込め詐欺の電話も急増している。港南署が把握しているだけでも毎日５件から10件は電話がかけられており、「卒業アルバムが悪用され、狭いエリアが集中して狙われるケースも多い」と警戒を強める。
また最近でも、７月23日に上大岡東在住の70代女性が２００万円、29日には芹が谷在住の70代女性が３００万円の被害に遭っており、いずれも犯人は、被害者の息子を名乗っているという。「最近はまたオレオレ詐欺が増えている」と港南署では注意を呼びかけている。
港南署は、港南区役所や港南防犯協会と主催で８月６日に「振り込め詐欺撲滅大会」を港南公会堂で開催し、港南区シルバークラブ連合会の会員らを対象に、講話などで注意を呼びかけた。港南署の小玉悟署長は、「港南区民は元気で、あいさつなども盛ん。それを生かして、お互いに声を掛け合うことも防止策になるのでは」と話していた。
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