木目込人形を40年来作り続けている 武智 千恵さん 逗子市久木在住 86歳
楽しく、面白く
○…ふくよかな頬に柔和な目元―。観る者の心をほっとなごませる江戸から伝わる伝統工芸、木目込人形。40年ほど前に偶然参加した講座で人形作りに参加し、その魅力の虜になった。以来、長年に渡って人形の製作を続け、現在は逗子の愛好家らが集まる「木目込人形・紫陽会」の会長も務める。「出来上がりが可愛らしいでしょう」と作業場に所狭しとならぶ人形を前に穏やかに話す。
○…雛人形に七福神、干支飾り。日本の伝統行事には欠かせない木目込み人形。形を整えた桐塑(とうそ)(桐の粉に糊を混ぜたもの)を根気よく削り、切れ込みに布を”木目込む”ことで2ヵ月ほどかけて仕上げていく。「時間はかかるけど、自分の頭の中のアイデアが形になっていくのが楽しい」。これまで作った人形は数知れず。始めて40年、今では型を使わずゼロから形を仕立てることができるほどの腕前になった。作品のファンも多く、知人から新築祝いや贈り物に製作を頼まれることもあるんだとか。「娘がお嫁にもらわれていく感じ。差し上げた後も今ごろどうしてるかしら、とか気になったりするの」と目を細める。
○…「人は生くるものなれば 生くる間は楽しくあらな」。ある歌の一節、自身が人生で大切にしている言葉だ。「苦しくても楽しくても同じ時間。それなら面白くなきゃ損でしょ」。そんな生き方が穏やかな口調や笑顔にも現れる。これまで大病もなく、86歳を迎えた今も健康そのもの。「私は幸せのかたまり。息子と娘の家族がすぐそばにいて、お友達も皆素敵な人ばかり。年なんか忘れちゃうわ」
○…木目込人形・紫陽会のメンバーは現在5人。月2回の稽古で作品づくりに取り組んでいる。「お弁当を持って、一日お喋りしながら作るんですよ」。指導する自身にとっても大切な時間だ。趣味で始めた人形づくりも今や人生そのものの。「楽しくて止められないわ。きっと死ぬまでね」といたずらっぽい笑みを浮かべた。
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