葉山まちづくり館で作品展「葉山・暮らしの中で」を開催しているイラストレーター つがおか 一孝さん 葉山町一色在住 65歳
人生、流されるままに
○…とりわけ目を引くのは、釣り上げたばかりのシーバスを描いたイラストだ。今の今まで海を泳いでいたであろう、目の透き通った魚体は光輝き、にわかに水彩画とは信じられないほど写実味にあふれる。アウトドアや旅行、釣りなど、多くの雑誌の表紙や挿絵を手掛ける名うてのイラストレーター。今回の作品展には風物や自然を描いた絵を中心に選んだ。葉山ならでは、そこに暮らす中で感じ取った空気感をただよわせる。
○…大学を卒業後、都内の広告プロダクションにデザイナーとして就職。入社して間もない頃、仕事に必要なイラストを描いたところ社内で評判になり、その後次々と頼まれるようになった。新聞広告にチラシ、いくつ描いただろう。記憶を辿り「デザイナーなのにね」と笑う。その後の人生は曰く「川に流されたかのよう」。新宿のゴールデン街でマスコミ仲間と酒を酌み交わす内、「ウチでも描いてくれないか」と依頼されるように。ある時友人から「なんでフリーにならないの?」と投げかけられ、入社した年の暮れに退職。その後独立し、以来40年になる。
○…「本業を聞かれたら『釣り師』と答えたい」というほど無類の釣り好き。遠くは北海道へ出向くほか、仕事の合間を見つけては海辺の自宅から近所のポイントへと足を向ける。その魅力を問うと「人生に必要なものの多くがある」との哲学が顔を覗かせる。夕日で赤く染まった海の前に佇み、沈む太陽に向かって竿を振っていると「気持ちを空っぽにできる。あの景色を眺めていると、葉山が一番だなって思えますね」
○…今年正月、写真家や彫刻家など地域の芸術家とともにしおさい公園でアート展を催した。日々の仕事が深夜まで及ぶことも度々の多忙な身だが「周りでボランティア活動を頑張っている人がたくさんいて、出来る範囲ですが僕も力になれれば」。身近な葉山の風景を描き出した、自身の作品が来春も花を添える予定だ。
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