今年から逗子海岸のライフガード事業を手がける「NPO法人湘南海上安全協会」の副理事長 歌代 光雄さん 逗子市新宿在住 69歳
「自分たちの海だから」
○…ひと夏の間、海が海水浴客で賑わう中でその安全を影から支える男たちがいる―。今年から逗子海岸のライフガード事業を請け負う「NPO法人湘南海上安全協会」。これまでは主に海上のパトロールを手がけてきたが、今年は新たに20人のライフガードたちの長に立ち、海の安全維持に全力を尽くす。「責任者だけど、教わる立場。毎日勉強ですよ」。笑うと日焼けした顔から白い歯がこぼれる。
○…ゼロからのスタートだった。昨年市から委託の打診を受けたもののライフセービングに関しては素人。悩んだ挙句、決め手になったのは「地元の海は自分たちで守りたい」という想いだった。「それに海上警備ができる自分たちにしかできないことがある」。その後、娘や知人のツテを頼りに人伝いにライフセーバーを探し、1年かけて組織としてまとめ上げた。自身の役割はもっぱら渉外交渉や海水浴客同士で揉め事が起きた際の”収め役”。海開きして早2週間、一日も欠かさず海岸に出向き続けた肌はライフガードたちに劣らず真っ黒だ。「肉体的なことじゃ若い奴らに勝てませんがね、気力じゃ負けませんよ」。そう語る横顔に精悍さが覗く。
○…東京の商社に勤め上げ、定年して8年。3人の娘たちも自立し、現在は妻と母との3人暮らし。趣味は中学生から続けているヨットで、今でも時間さえあれば逗子や葉山の沖に船を出す。「自分にとって海はライフワークというか、人生そのもの。自然の楽しさ、怖さ、仲間意識とか忍耐強さとか色んなものを海を通して学びましたから」と夕暮れの海に目を細める。
○…今年はスタートライン。今後はさらに組織基盤を固め、ゆくゆくは地元中高生にライフセービングに親しんでもらうプログラムも視野に入れている。「やっぱり自分たちの海。将来的に地元のライフセーバーが海を守るための橋渡しができれば」。海の安全は自分たちの手で。海に魅せられた男の新たな挑戦が始まった。
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