東京湾水先区水先人として活躍し、春の褒章で黄綬褒章を受章した 高杉 洋一さん 片吹在住 69歳
海 知り尽くした水先人
〇…「大変ありがたいこと。光栄です」。今年春、黄綬褒章を受章した。「長い間やっていただけだから」と謙遜する一方、「無事故でやってこられたのは、誇れること」と笑顔を見せる。船長から、東京湾を行きかう船舶が無事に目的地につけるように先導する水先人になって16年。年平均約445隻、全長50mの小型船から300m以上の大型船までを先導する。「やっぱり、大きな乗り物を動かすって、面白いんだよ」と少年のように目を輝かせる。
〇…進路を決めたのは、高校3年生の時に見た1本の映画だった。小林旭主演の「太陽、海を染めるとき」。映画の冒頭、真っ赤な夕日が画面いっぱいに広がり、真っ白な帆を膨らませた船が横切った。「こんな世界があったのか」。映像から受けた衝撃は、船乗りへの憧れに変わった。「事務職は嫌だと思っていたし、体を動かすのは好きだったから、よーし、船乗りになろうと思ってね」。生まれ育った青森県から上京。東京商船大学(現東京海洋大学)に進学した。
〇…だが一度航海に出れば、長期間帰ってこられない過酷な生活。「出航の時、家族が見送りにくるんだけど、下の子どもに泣かれたこともあったなあ」と振り返る。だからこそ、家族との時間は大切にしてきた。妻と3人の娘との共通の趣味であるテニスや旅行。「船の上は、独立した世間。煩わしくなくていい」と言いながら、家族を語る表情は限りなく穏やかだ。
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