きょう28日、柳町ケアプラザで認知症をテーマに講演を行う 笹田 通子さん 六浦在住 56歳
心は常に、利用者の部屋
○…きょう28日、柳町地域ケアプラザで認知症についての講演を行う。介護士として14年間、認知症患者と接し続けてきた。現在、同所の所長を務める。「楽しい思い出が99%。嫌な1%は腰痛があったことかな」と明るい笑い声を響かせる。「認知症」という病名で括られているが、利用者の人生歴は様々。「だからこそ接し方に正解はない。経験で見極めていくしかないんです」と話す。
○…宮崎県日南市生まれ。好奇心旺盛で、民謡や手芸、バレーボール、絵画などに興味があった。管理栄養士の資格も持ち、お菓子作りも大好き。「これらの趣味がぜんぶ生かせるのがこの仕事だったんです」。特に民謡で培った歌声は利用者に大好評。敬老の日には変装し「柳輝子」という芸名で歌を披露。十八番は『大阪ラプソディー』だ。
○…重度の認知症の利用者が、ある日失踪した。日頃から、伝えたいことを理解してくれない人だった。捜索の末、発見。失礼のないよう敬意を払い「お疲れになったでしょう、一緒に帰りませんか」と声を掛けた。すると「あんたなら信じられる」という返答があったという。「その時の言葉は、ずっと忘れられません」と目を細める。「可愛がってくれる方が多いんです。誰も近寄れない人と、打ち解けたり」。利用者と接するうえで常に意識するのは、「尊敬の念」を持つこと。「人生の先輩だから、尊敬の念を忘れない。そういう態度を、利用者はよく見ていらっしゃいます」
○…「落ち込んだら利用者の部屋に行く。歓迎してくれるのが嬉しくて」。役職上、現場を離れることが多くなったが、それでも心は常に「利用者の部屋」にあるという。認知症の家族の理解が進んでいないことを憂う姿も。「手に負えないと思い、嘆く人が多い。対応によっては落ち着いて、明るくされる人もいるんです。それを知ってほしい」。心から利用者を尊敬するからこその、切実な思いを訴える。
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