横浜市は国から「国際戦略総合特区」の指定を受け、京浜臨海部を医療分野の産業、研究開発の拠点とする取り組みを進めている。すでに複数のプロジェクトが進行中で、市では5年間で3千億円の経済波及効果を見込む。
「国際戦略総合特区」は、次世代エネルギーやバイオなど成長が期待される産業の集積拠点の形成に対し、国が規制緩和や税制の優遇、財政・金融上の支援を行うもの。横浜市は昨年12月、県、川崎市とともに「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の指定を受けた。
企業や研究所が集積している末広地区(鶴見区)と殿町地区(川崎市)、コンベンション施設が多く学会や展示会が開催されるみなとみらい地区(西区)、市立大学医学部附属病院がある福浦地区(金沢区)の4カ所を拠点に、医療分野における先端的な研究や新産業の育成を目指している。
すでに7分野16プロジェクトが進行。このうち腹腔鏡を使った手術の際、CT・MRIの画像をもとに手術前に患者の臓器の状態を再現できる「手術シミュレーターの開発」、小型・低価格化と現状は難しい硬度の測定を可能にし、リンパ浮腫の診断などが家庭でも可能になる「超音波画像装置の開発」の2プロジェクトは、特区計画の第1号案件として認定を受け、それぞれ6千万円の助成を受けることが決まっている。「いずれも現状では同様の機器がなく、開発に成功すれば新たな市場が誕生することになる」(木原記念横浜生命科学振興財団)と関係者は期待を寄せる。市経済局では特区指定により「5年間で3千億円の経済波及効果」を見込む。
もっとも医療分野では激しい開発競争が繰り広げられており、研究の商品化などは未知数な部分も多い。市では「新薬一つで1千億円規模の市場が生まれると言われている。一つのプロジェクトが成功すれば、中小企業の受注増や雇用の増加など波及効果も大きい」と話している。
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