市大病院 新出生前診断に69人 染色体異常を検査
胎児の染色体異常を妊婦の血液から調べる新しい出生前診断が、4月1日に国内15施設で始まった。県内唯一の認定施設、横浜市立大学付属病院=金沢区=では1カ月で69人の診断を行い、3倍以上の問い合わせがあったという。命の選別につながる検査だけに、社会全体として診断そのものがどうあるべきか。ルールづくりについての議論が急務だ。
市大病院の医師も参加する同診断の研究組織「NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)コンソーシアム」の発表によると、開始1カ月間の診断は全国441人で、257人の結果が判明。陽性は3・5%にあたる9人だったことが分かった。
市大病院では検査前に義務付けられている遺伝カウンセリングを受けた人の約9割が受診しており、県内居住者は4分の1にとどまる。カウンセリングでは結果が陽性、陰性だったときの解釈や染色体異常症、ダウン症児の特徴や成長など10項目以上を約1時間かけて説明する。対応する担当医は3人で、1日1件から3件だが、予約は最短でも1カ月待ちの状態という。
同院の病院長で遺伝カウンセリングも担当する平原史樹・産婦人科教授は「最も大切なのは命の重みを感じること。検査が本当に必要か、まずはじっくり自問自答し、十分に考えてほしい」と強調する。
事前理解に重点
採血し、血液中のDNA断片を分析する同診断は、従来の羊水検査などに比べて妊婦や胎児への負担、リスクが少ないとされている。
同院の診断条件は【1】出産予定日に35歳以上【2】ダウン症などの子どもの妊娠・出産経験がある【3】胎児がダウン症などの可能性が高い―のいずれかに該当することで、費用は約21万円。検査への理解をより深めてもらうために、説明文がホームページに掲載されている。
臨床研究として検査を行う施設は日本産科婦人科学会の指針をもとに、日本医学会に認定された医療機関。4月30日に6施設が追加認定され、現在は全国21施設となっている。
神奈川県産科婦人科医会の東條龍太郎会長は「(同診断は)日本の社会に受け入れられるか検討、試行の段階。仕組みや体制を構築していく必要がある」と話す。(公財)日本ダウン症協会では「ダウン症のある人が、その人らしく普通に暮らせる社会の実現が望まれる。同診断への価値観は各人で異なり、今後も議論を続けるべき」としている。
12月には受診者の最初の出産が見込まれ、母子のデータは臨床研究として集計、分析される予定だ。
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