在宅医療 地域でどう支える? 医師会が啓発講演
国の高齢者医療制度が「在宅」へと舵を切る中、市内でもその体制づくりが加速されている。こうした中、緑区医師会は一般向けの啓発講演会を開き、地域における在宅医療の要となる「かかりつけ医」の重要性や、ひとり一人が「終末期」について考え、意思表示することの大切さを訴えた。
横浜市の高齢化率は人口ピーク時の2019年に25%、2060年には35・3%と推計されている。現在、市内北部地区で最も高齢化率が高いとされる緑区(22・5%)でも今後高齢人口は増えていくと見られ、在宅医療のニーズも高まると予想される。
こうした現状を踏まえ、市は市医師会などと協力し、在宅医療を担う医師への支援や、在宅介護を担うケアマネジャーなどに対する医療的支援を実施する「在宅医療連携拠点」の整備を進め、医療と介護従事者による情報共有や地域に対する情報発信などを加速させているが、将来在宅医療を担う専門医の不足や、終末期・緩和ケアなどに対する理解不足など課題が多いのも現状だ。
多くの人が家で看取りを行う時代の到来を目前に、在宅医療の現状について知ってもらいたいと2月20日、緑区医師会が開いた講演会には、在宅緩和ケアの草分けとして都内で訪問医療に取り組む鈴木央医師が登壇。日々接している自身の患者の例をあげるなど、緩和ケアの現状や研究テーマについて話した。
「緩和ケア」は治療の効果が見られなくなったがんや心疾患、認知症などの患者に対し、「治癒」ではなく痛みなどを「和らげる」効果を目指す医療。鈴木医師によるとこの「緩和ケア」への移行が適切に行われれば終末期医療は精神的にも肉体的にも負担が少ないという。ただ、その見極めは非常に難しく「もう少し治療を続ければ治癒するかも」という患者自身や家族の気持ちの整理がつかずに苦悩を抱える人も少なくない。
「かかりつけ医」の重要性説く
鈴木医師は病気によって移行を見極めるタイミングが異なることなどをあげ、困った時にいつでも相談できる「かかりつけ医」の重要性を説いた。現在、訪問医療を専門で行える診療所や医師はまだまだひと握り。今後は地域の開業医などがこの役目を担うと見る見方もあり、医師会などでも会員向けに訪問医療についての勉強会が開かれるようになったという。「自分の身体のことをずっと診てくれている存在は在宅医療においても貴重な存在。かかりつけ医の必要性についてぜひ地域で考える機会を積極的にもってほしい」と鈴木氏は付け加えた。
講演会を主催した緑区医師会の大迫可奈子さんは「私たち医師会も地域の方々も一緒になってこの問題に対し考える機会を増やせれば。目前に迫った在宅時代に向け、こうした啓発は積極的に行っていきたい」と話している。
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