旭区・瀬谷区 人物風土記
公開日:2013.10.24
小冊子「ひきこもりから働くということ」を出版した
岡本 圭太さん
中希望が丘在住 39歳
「当たり前」の壁乗り越えて
○…「働くっていうのは、今のあなたが置かれた状況よりずっと楽だよ」。ひきこもっていた当時の自分に送る言葉だ。加えて「給料を苦痛の対価だとすると、ひきこもりは時給2000円。それくらい大変」と例える。自らの経験や就労して感じたことをつづったコラム「ヘモヘモ通信」を、NPO法人リロードが発行する月刊誌で連載。7年続けた連載を小冊子にまとめ、昨年12月に第1弾を発行して早くも3冊目になる。
○…ひきこもりになった直接のきっかけは、就職活動の失敗。面接で落ちることを繰り返すうちに、次第に一歩を踏み出すことさえできなくなった。そのまま、大学を卒業してひきこもりに。卒業後は就職して自立するという、普通は当たり前と考えることができない。それが何より辛かったという。当時を振り返り、「自己否定、自己嫌悪などまったく自分を認められなかった」と話す。劣等感から、家族以外の人とはほとんど会わなくなった。その状態は25歳直前まで続いた。
○…転機は不意に訪れた。偶然手にした雑誌に、ひきこもりの記事が掲載されていた。そこで初めてひきこもりという単語に出合い、読み進めるうちに自身との重なりの多さに気付く。支援を行う施設や病院を調べ、通院から始めた。しかし、いざ決断から行動に移すのに3週間かかった。「怖かった」。率直に胸の内を明かす。それから約5年。自助グループへの参加やボランティア活動などを経て、ついに働くことになった。
○…06年から若者向け就労支援施設で相談員を務め、7年が過ぎた。「ろくに就職した経験もないのに無理だと思った」と話すが、「性に合っていたのかも。自分の経験を生かせる仕事だから」とも。今後も、「挫折の経験や、ストレートにいくことが人生じゃないよ」と伝えていく。今、過去の自身と同様の悩みを抱える人たちへ「少しでも背中を押せたら」と穏やかな口調に思いを込める。
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