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重要文化財への指定が決まった貨客船「日本郵船氷川丸」の船長を務める 金谷 範夫さん 中区在勤 65歳

掲載号:2016年5月12日号

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「歴史の証人」守り、後世へ

 ○…「気持ちいいなぁ」。見上げた青空に白と黒の船体が映える。自らが船長を務める、日本郵船の貨客船「氷川丸」である。引退後、山下公園に係留保存されている同船は今年3月、水上で保存されている船としては初の重要文化財指定の運びとなった。昭和初期から日本の経済を支えてきた同船はまさに歴史の証人。「戦争の時代もくぐってきた大変貴重な船。この船が背負うものを後世に残したい」

 ○…「動かない船」の船長を務めて13年。「就任が決まった時は『楽勝だ』って思いましたよ。ほかの船にぶつかる心配がないからね」と笑う。「でも、氷川丸の歴史を後世に伝えるという使命を考えた時、この船の船長業務の方が大変だってことに気づいたんです」。船には年間約30万人もの見学者が訪れる。乗客の安全管理は、船体の保守管理と並ぶ重要な任務だ。船は動かずとも、その表情は海上で指揮を執るキャプテンの顔そのものである。

 ○…東京、西荻窪の生まれ。「海が大好きでした。小学生のころから船乗りになりたくてね」。その言葉通り、日本郵船に入社後は貨物船やコンテナ船の航海士として世界中の海を駆け巡った。中でも、最初に船で外国へ行った時のことは今でも鮮明に覚えている。「3カ月かけて南米諸国などを回る航路だった。初めて海外の港に着いたときは感動したな」。海に魅せられた少年の夢が叶った瞬間だった。

 ○…航海士時代は、1年のうち約8カ月が海上生活。心の支えになったのは家族の存在だった。「家を守っていた妻が一番大変だったと思います」。結婚式の時は、式の3日前に船を降りた。娘が生まれた時も、誕生1週間後には出港しなければいけなかった。苦労をかけた家族に「いつもありがとう」と感謝の言葉。はにかむ笑顔は温かい。支えてくれた家族のためにも「後悔はない、幸せです」と自身の人生に胸を張る。根っからの「海の男」の生き様である。

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