5月16日から第一回公募展を開く金沢区写真連盟の理事長を務める 片岡 順一さん 釜利谷南在住 81歳
心に映る機影を追って
○…1990年に出版した写真集の表紙は、燃えるような太陽をバックに浮かび上がる飛行機のシルエット。この一枚を撮るために、5年を費やした。「熱意がないとできない道楽。お金も時間もかかった」。シャッターチャンスは1日に数回。時間的制約のある会社員だったが、撮りたい「イメージ」を追求した。昨年10月、金沢区写真連盟が発足し、その理事長に就任。「賞をいただくことが、ずい分励みになった。今度は自分が発表の場を提供したい」と話す。
○…兵庫県出身。初めて飛行機を見たのは戦時中だった。爆音とともに頭上高く飛ぶB―29。「あれが飛行機か。すごいなあ」。不思議と恐ろしさはなかった。以来、大空を横切る機影への憧れは消えることなく、30代半ばで全日空に転職。飛行機という被写体を得て、もともと好きだった写真にのめり込んでいく。800㎜望遠レンズや三脚など約20kgの機材をかついで、全国を歩き回った。
○…心血を注ぎ込んだ作品は、やがて神奈川二科展や日本写真家協会展で大賞を受賞するほどに。87年の銀座ニコンサロンを皮切りに、全国各地で個展も開いた。現在は、二科展写真部の事務局長として年に一度の公募展の審査員も務める。「デジカメの普及で写真愛好家のすそ野が広がった」という一方で、「簡単に撮って消せるから、構図が甘い。とりあえず撮影したものが多い」とも。苦言を呈するのも写真と真剣に向き合ってきたからこそだ。
○…「写真は光と影のドラマ。同じ場所でも、朝と夕方ではまったく違った表情になる」とその奥深さを語る。頭の中には、まだまだ撮りたい絵がある。赤黒い月に入った飛行機のシルエット。日の光に照らされたシーサイドライン。何度か試みたが、自身のイメージに重なる作品はない。「1回で撮れるものじゃない。作品を創るには何度も足を運ばないと」。妥協を許さない視線で、今日もファインダーを覗く。
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