住民投票制度の課題と議会の役割とは 横浜市会議員(金沢区) 黒川まさる
緊急事態宣言下、あらゆる政策を総動員して新型コロナ感染症との戦いは続いています。闘病中の方へのお見舞い、亡くなられた方へのお悔やみとともに、医療関係者やエッセンシャルワーカーには心より感謝申し上げます。また、行政による様々な制約の中でも懸命に頑張る皆さまにもあらためて感謝いたします。
1月8日、3日間続いた横浜市会臨時会の最終日、私は自民党を代表し討論の場に立ちました。
昨年末に、市民団体が19万筆余の署名と共に『IRの賛否を問う住民投票条例制定の直接請求』を市長に提出し、地方自治法に則って臨時会が実施され、結果は否決でした。多くの市民からご意見をいただきましたが、私が訴えた主な反対理由は以下の3点です。
まず、横浜市が進める『イノベーションIR』は、コロナの影響で進捗が遅れ、12月に横浜市の考え方としての実施方針案が議会に提出されました。今後、事業提案の募集が始まりますが、施設の規模・依存症や犯罪対策・地域貢献など具体的な内容が明らかになるのはこれからです。中身もわからない事案に対して住民投票を行うことは議会が議論を放棄したことに繋がります。
次に、市民団体の提案では公布後60日以内に住民投票となります。緊急事態宣言下、賛成派・反対派が市内各地で意見を訴え、ビラを配るなど現実的ではありません。私は討論で、今回の直接請求が選挙向けのパフォーマンスだとしたら住民投票を願う19万人の市民を裏切り、議会を冒涜する行為だと警告しました。その直後に署名活動を主導した政党が否決の結果を批判し、夏の市長選挙に向けて戦うと声明を出しました。まさに直接請求制度の政治利用ではないでしょうか。
3点目は住民投票制度が、本当に民意を反映するのかという疑問です。政策に賛否両論があるのは当然です。議会では様々な知見を集め双方が真剣に議論を交わし、結果には付帯意見で様々な考えを反映させることもできます。低投票率でも過半数で賛否を決めてしまう仕組みが民意と言えるかは疑問ですし、議員8人以上で住民投票の発議は可能なのに署名活動を展開したことにも政治的な思惑を感じます。
IRを巡る議論はこれからです。議会でしっかりと議論を進め、市民の心配を払拭し、将来に安定的な財源や雇用をもたらし、横浜の魅力を向上させる施設だと確信できない限り、私たちは賛成しませんし、市長には市民への説明責任も求めてまいります。
私たちは選挙で選ばれた市会議員としての矜持を持って否決しましたが市民の政治参加という課題も受け止め、今後もその職責を果たしていくことをお約束いたします。
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