『空の上で本当にあった心温まる物語』を出版した元全日空CA 三枝(さえぐさ)理枝子さん 西区在住
思いやりの”伝道師”
○…香港行きのフライトに1人で搭乗した初老の男性。「ベレー帽をかぶっているのに、別の帽子を握っていらっしゃることに気づいて声をかけると、それは一緒に旅行へ行くことを約束されていた亡き奥様のものだったのです」―。かつて全日空でCAとして勤務していた頃出会った乗客との思い出は、語り始めれば尽きることがない。そんなエピソードをまとめた書籍『空の上で本当にあった心温まる物語』を昨年出版。10月に第2巻が刊行された。
○…人を相手にした仕事をしたいとCAに。「雨が降っていても離陸して5分もすれば晴れ。空は特別の空間」。空港で感じる「ワクワク感」は幾度乗務を重ねても新鮮だったと笑顔を輝かせる。とはいえ「CAは食事の配膳や誘導だけでは輸送機関に乗っているだけの人」と仕事への姿勢は厳しい。「最高のサービスでもてなすにはお客様をさりげなく観察し、心の声を読むこと」。多くの心温まる出会いに接してきたのも、そんな心がけがあったからこそだ。
○…外国人と接する機会が多く「日本の文化を一つ位知っておかないと」とCAになり間もなく習い始めた茶道。現在は師範として、師匠が園長を務めていることが縁で、10年以上港南区の幼稚園で園児に手ほどきを続ける。普段は園庭で駆け回っていても、稽古となれば背筋を伸ばし、すり足で歩く園児。「茶道の精神”お先に””どうぞ”と相手を思いやる気持ちは人間の核。園児達は譲る心が身についている」と目を細める。
○…機内で銀婚式記念に夫が妻へ指輪を贈ったのを目にした周囲の乗客が、次々プレゼントを買い求めたことがあった。「優しさは伝染する」。現在はCAの経験や茶道の知識に基づき、接遇やコミュニケーション能力に関する研修で講師として活躍。対話術を説く本も執筆した。「本を出版できたのも自分1人の力ではない。恩をもらったら返していかないと」。思いやりのバトンを繋げる活動が続く。
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