町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の99
思いのまま
当社には「思いのまま」という梅が2本ある。もう50年ほど前、成瀬の方がトラックに積んで奉納された梅。若木で勢いがよく、一重の梅だが濃いピンクと白に咲き分けていたことから、奉納された方が「思いのまま」と命名したとか。その木にちなんで当社はオリジナルデザインの絵馬を製作して今に至る。奉納された方は頻繁に参拝にいらしては、梅を親しげに見上げていた。歳月は流れ、軽トラックで来ていたその方も高齢になり、自転車で通ってくるようになり、ボケも進み足腰も弱って参拝にも訪れなくなってしまった。すると、奉納した梅も次第に紅白の色分けが不鮮明になり、老木となった今は咲き分けることもなくなり、全ての花が淡いピンク色になってしまった。まるで奉納した主に足並みを揃えるかのように。絵馬のデザインの梅と知った参拝者が見上げて、咲き分けている花を探して首をかしげるのは無理もない。当社の絵馬は半世紀前の咲き分けをモチーフにしているのだから。
さて、もう1本は鳥居脇にある。こちらは10年ほど前に大きな鉢植えで戴いた八重の梅で、観賞用として作られた「思いのまま」という品種だ。鉢植えの時には紅白の花が半々くらいだったが、地植えしたらやはり次第に赤が少なくなってきている。もしかしたらそのうち白い八重咲の梅に先祖返りしてしまうかもしれない。それでも今年も弥生の暖かさで咲き始め、あちこちに赤い花や、赤い花弁が混ざった花をつけている。
こうして境内には一重の梅と八重の梅、2本の「思いのまま」がある。説明が厄介だが老木の思いのままは一社の故実によるもので、もう1本は品種と区別している。どちらも綺麗で楽しめるから問題なし。やらかしてしまっている某大国の独裁者の身勝手な思いのままとは大違いだ。世界も自国民さえも誰も喜んではいない。
宮司の徒然 其の142町田天満宮 宮司 池田泉5月16日 |
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