市内在住の女子プロボクサー、IBF女性世界アトム級チャンピオンの花形冴美選手(花形ジム所属=「人物風土記」で紹介)の初防衛戦が決まった。9月12日(木)、後楽園ホールのリングでこれまで一度も勝ったことがない因縁の相手と“3度目の正直”となる決戦で拳を交える。
花形選手は昨年9月、IBFアトム級王座決定戦を行い、元WBCミニマム級チャンピオンの黒木優子選手を倒して5度目となる挑戦で世界タイトルを掴み取った。
初防衛戦となる今回の試合まで少し間が空いたが、週5、6日のトレーニングと実戦形式の練習を欠かさずにいつでも戦える状態をキープしてきた。7月に正式発表された試合の相手は元WBO王者の池山直選手。現在49歳の池山選手は“鉄人”の異名を持つ因縁の相手だ。花形選手はこれまでに王者だった池山選手と2度対戦し、いずれも引き分けで涙を飲んでいる。「今回は自分の方がチャンピオンの立場で戦うが、防衛戦というよりも今までの借りを返すつもり」と決着に意欲を見せる。
二人が戦うスタイルはよく似ている。テクニックよりも近距離での打ち合いを好む「ファイター」と呼ばれるタイプ。実はプライベートでは友人でもあり、食事も一緒にする仲だ。競技人口が少ない女子プロボクサーの世界は、ひとたびリングを離れれば互いのことが理解し合える関係でもある。最後に池山選手と対戦したときは、花形選手にとって4度目の世界戦だった。試合に引き分けた後、世界の壁の厚さに心が折れそうになった。そんなときに「冴美ちゃん、あきらめちゃいけないよ」と池山選手が声をかけてくれた。対戦の1週間後には50歳の誕生日を迎える池山選手は王座を陥落して以来、今回が再起3戦目。勝てば世界タイトル獲得の国内最年長記録を更新することにもなる。
花形選手が昨年9月に世界王座を獲得してから試合のオファーはいくつかあった。そんな中で池山選手との試合を決めたのは「自分にとって価値のある試合をやりたい」という思いから。世界王座の地位もチャンピオンベルトにも何の未練はない。今の自分のことを少しでも成長させてくれるような戦いの舞台こそが求めているもの。34歳という年齢。残された選手としての貴重な時間を大切にしたいと考える。
バイト先のラーメン店も応援
花形選手は普段働きながらボクサーとしてトレーニングを続けている。市内金森の人気ラーメン店「超純水採麺 天国屋」でのバイト歴は6年になる。店主の佐々木昭一さんはまだ4回戦だったころから応援してくれている一番の理解者。王座に挑み失敗し続けたときも「自分は日本一のラーメンを作る、だから絶対に世界チャンピオンになれ。お互いに一番になろう」と励ましてくれた。今も試合前1カ月はどんなに店が忙しくても仕事を休ませ、試合に向けて集中する環境を用意してくれる。佐々木さんは来店者に声をかけ、応援ツアーも企画している。
花形選手は王者として初の防衛戦に向け「自分の力を出し切り、精一杯戦う。そして勝利の後は、いつも応援してくれている大切な人たちと一緒に喜びを分かち合いたい」と握った拳に力を込めた。
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