7月25日に発売される小説「秋水の夏」を執筆した 三吉 眞一郎さん 六浦在住 63歳
埋もれた歴史に光を
○…デビュー作の出版から8カ月、2作目となる「秋水の夏」を上梓した。作品に共通するテーマは「逃れられない宿命に対峙した人の姿」。「地元の歴史を掘り起こすきっかけになれば」と話す。
○…定年を間近に控えた3月11日、大災害が起こった。その1カ月後、有休を使い、石巻でヘドロをかき出す自分がいた。「まるで戦場。人生60年で最も濃密な部類に入る9日間だった」。多くの人が亡くなった事実を前に、湧き上がってきたのは「痕跡を残さなくては」という想い。ノートにスケッチや雑感を記した。同時に「自分が生きたランドマークを作りたい」と執筆の意欲が再燃した。
〇…50歳を過ぎた頃、広告代理店に勤務する傍ら執筆活動を開始した。筆をとるのはもっぱら休日の土曜と日曜。誰もいない会社にコーヒーとサンドイッチを買って出社し、夜11時頃に守衛が見回りに来るまで部屋から一歩も出ずに書き続けた。「あのころは土日が楽しみで仕方なかった。ハイになっていたなあ」と振り返る。「秋水の夏」も、その頃書いたものが原型だ。
○…アイデアは「天から降ってくる」といたずらっぽく笑う。大学卒業後、サンリオに就職するも3年で辞め、ドイツ留学でイスラム建築を学ぶ。帰国後、広告代理店のプランナーに。”天の啓示”を得られるのも、こうした幅広い経験が土台にあるからこそ。息子の相談やタクシー運転手との会話など、日常のささいな出来事が心に蓄積され、数限りないネタ元となる。
〇…定年退職を機に東海道五十三次をつぎはぎで歩き始めた。「めちゃめちゃ面白い。埋もれた歴史の宝庫」と目を輝かせる。事前に面白そうな場所を下調べした上で、現地で寺の住職や地元民に話を聞く。「史実が一番のネタになる」とニヤリ。新しい作品の構想もこの歩きで生まれた。「戦国時代から現代につながる壮大な話。大河ドラマになるんじゃないかな」
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