日本有数のジャズヴァイオリニストで、生涯学習「西柴」の観月会でその音色を響かせた 里見 紀子さん 西柴出身
ジャズで魅せる”自分らしさ”
○…凛と伸びた立ち姿とは裏腹に、表情豊かに奏でられる音色。「ノリノリ」の愛称よろしく、情感に富んだヴァイオリンの音で観月会の夜を魅了した。故郷・西柴でのコンサートは初。「故郷に錦を飾りに来ました」と笑顔を咲かせる。心にいつも置くのが、「常に最高の演奏を」。生まれ育った地元に、まさに”最高の演奏”を届けた。
○…2歳でヴァイオリンに触れて以来、腕を磨いてきた。小学校の卒業アルバムに記した夢は「ヴァイオリニスト」。自然と密接した西柴の環境も少なからずその音楽性を育んだ。「裏山で絵を描いたり、海の公園まで走ったり」と想起する。「自然の美しさを表現する音楽。海や山と触れ合うのは欠かせない体験だった」。東京藝大でヴァイオリンを専攻。「のめり込んだ」というオーケストラでは、指揮者を置かないスタイルに挑戦。「管楽器も全て把握して演奏する。皆で作り上げる経験ができた」と笑う。
○…「人が書いた楽譜だけを弾いて死ぬのはいや」。オーケストラピットに収まって模索する日々。当時、劇団四季の同じ公演に参加していた演奏者がジャズチェロを弾くと知り、ライブハウスに足を踏み入れると「これかも」と直感した。「即興演奏で、同じ日でも同じメンバーでも違う音楽になる」。自分にしかできない表現が見つかるかもしれない。「これがだめならやめる」覚悟で飛び込むと耳コピーやトッププレイヤーから技を盗み、独学でジャズヴァイオリンを確立した。
○…これまでプロになった教え子も数人。CM楽曲など華々しく活躍するが「ライブが好き。ライフワークとして続けたい」と月15本はステージに立つ。「クラシックと違い、手を伸ばせる距離でダイレクトに伝わる」。ヴァイオリンの音が嫌いだったが、好きになった――。観客からのそんな言葉が嬉しい。クラシックの強いイメージに、ジャズが加わり生まれる響き。「もっと身近に感じて」と願う。
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