港南区遺族会の会長として戦争を伝える 北見 政雄さん 上大岡西在住 74歳
感謝と平和、語り続ける
○…太平洋戦争で一家の大黒柱を亡くした遺族が、社会的な冷遇を是正しようと発足した日本遺族会。区遺族会では現在、戦没者の慰霊を中心に125人の会員が活動する。戦後70年を迎える今年、「戦争は兵隊もつらいけど、家族もつらい。その経験を伝えていくのが使命」と静かに語る。
〇…父は31歳の若さで命を落とした。その事実を聞き、泣き暮らす母の姿が脳裏に浮かぶ。食べることに必死な時代。それでも懸命に働き、自分と弟を育ててくれたことを思い出し、「父を亡くした母の使命感だったんだろうな」。父がいなくて寂しい思いをしたと語るが、一緒に過ごした記憶は失ってしまったという。それでも「戦地から母に送られてきた手紙には、自分のことも書かれていて」と父の姿に思いを巡らせ、父が眠るフィリピンのレイテ島には慰霊のために何度も訪れた。激戦地を目の当たりにし、「その悲惨さは言葉にならなかった」と思い返す。
〇…定年後、母の付添で区遺族会の会合に出席したことが縁となり入会。「英霊を守る事と、戦争を語り継ぐ事が大切」と活動の意義を語るが、母の世代の会員は減り、自分の世代の会員も高齢化が進む。「残念だけど、残された活動の時間は長くない」と寂しげ。戦争を知らない世代が増えた今こそ、「戦争は不幸しか生まない。二度と繰り返してはいけない」と呼びかけ、区内にある戦没者慰霊堂や平和祈念館がその思いを伝える場になればと願う。同時に「自虐史観を正し、日本人として誇りを取り戻していく活動にも力を入れたい」と思いも口にする。
〇…絵や写真が趣味で、お酒を飲み、妻と旅行も楽しむ。だが、「今の平和は想像できなかった」とぽつり。子どもの成長を見ずに戦死した父、苦労を重ねた母。「自分の両親は大変な時代を過ごした。今が幸せだからこそ感じてしまう。今の日本の平和は戦没者のおかげ」。感謝の気持ちと平和への思いを胸に語り続ける。
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