英日翻訳家として初の訳書『世界を変える知的障害者』を出版した 古畑 正孝さん 港南台在住 70歳
探究心が導いた翻訳の夢
○…今回の訳書出版は親交がある講師の一言がきっかけだ。「面白いから読んでみたら」と渡された1冊。2日間で読み終えると、その次の一言は「翻訳してみたら」だった。「以前から翻訳書を出したかった。少し不安はあったが、チャンスだと思った」。原文の文章量に負けてしまいそうになりながらも、丹念に作業を進めた。「辛い境遇に負けず頑張る主人公に、勇気をもらえるはず」。原文で受けた感動を、日本語で伝えようと努めた。初となる訳書を手に取り「夢が叶った」と笑みをこぼす。
○…東京都出身。読書好きで大学生時代は洋書を原文のまま読みふけった。編集者を志して出版社を受験したものの、叶わずに方向転換。政治学を専攻していたことから地方公務員を目指すようになり横浜市に入庁した。市では企画調整局を長く経験。一方、私生活では社会人になったころからテニスが好きで、現在も週3回行うほど。3年前からは水彩画も始め、旅行先で撮影した写真の絵を描く楽しみも増えた。「最近やっと描けるようになってきた」とほほ笑む表情からは、充実した日々の暮らしぶりがうかがえる。
○…翻訳家への転機が訪れたのは市が国連と共同で国際会議を開催した1982年。資料の翻訳家が足りず、事務局を手伝っていた企画調整局でもサポートすることになった。「翻訳をもっと深めたい」と翻訳学校に通い始め、フリーランスの翻訳家として活動するため、仕事を早期退職した。
○…「翻訳は英語、日本語、調査が三位一体」と考える。「初めから日本語で書かれたものと思えるような翻訳が目指すところ。そのために、元の文章をしっかり理解する必要がある」。訳書の舞台であるニュージーランドの特有文化や、主人公のロバートの好きなラグビー、著者など各地に取材をした。「翻訳は知らなかったことを知ることができるから面白い」。探究心はますます深まるばかりだ。
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