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港南区・栄区 人物風土記

公開日:2016.04.14

港南台で5月からこども食堂をオープンし、子どもの食事支援の取り組みを始める
吉田 登さん
港南台在住 74歳

知らないふり できない

 ○…子どもの6人に1人が「貧困児童」、まともな食事をとることができない子どもがいる―。その報道にショックを受けた。「大人が知らないふりをするわけにはいかない」と動き出し、連合自治会や民生委員などに声をかけるとすぐに協力者は集まった。5月から毎月第1金曜にオープンする「こども食堂」では高校生まで100円、小学生未満には無料で夕食と「居場所」を提供していく。

 ○…30代のころから通信設備会社を経営する傍ら、奉仕活動に注力してきた。「会社は従業員に任せきりだった」と申し訳なさそうに振り返るが、バングラデシュで井戸の整備などに取り組み、2000年までの10年間で完成した小学校は20にものぼる。その手法を「ただお金を出すんじゃなく、仲間を増やして周りを巻き込み、『運動』にすることが大事なんだよ」と笑顔で明かす。その後、59歳で会社を清算すると今度はタイへ。政府の協力を得ながら02年には、親をエイズで亡くした孤児のためのケアセンターを完成させた。

 ○…こども食堂を主催する「サンタの家」の名は、04年から10年間タイで運営した孤児院に由来する。その風貌から「サンタ先生」と慕われ、引き取った孤児らと共同生活を営んだ。身寄りのない4歳の少女の小さな手が、不安な気持ちからギュッと腕にしがみついてきたその時の感覚は、今なお鮮明に残る。「困っている子どもがいるのにできないなんて言えない。できると言ったからにはやるしかない」。退路なき覚悟が、周りの心を動かしていった。

 ○…教育支援制度が整ってきたのを見届けて帰国後、「もうのんびりしようと思ったけど、だんだんムズムズしてきた」。小学生の登下校見守りにも参加しているが、「この中にもご飯を食べられていない子どもがいるのだろうか」。その子を想像すると、我が子のことのように胸が痛む。サンタが望むのはいつでも、子どもたち皆の笑顔だ。

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