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町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の72

掲載号:2021年3月4日号

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山茱萸(サンシュユ)

 今年も粛々と初午祭(はつうまさい)を奉仕した。初午は一般的に2月節分を過ぎてから巡って来る午の日とされ、その12日後が二の午となる。起こりは和銅4年(711年)2月初午の日に、京都伏見稲荷大社の伊奈利山に宇迦御霊神(うかのみたまのかみ)が降臨したとされたことから祭日とされた。ただし旧暦2月初午は今年で言うなら3月18日であり、本来暖かな春の祭事だった初午祭は、新暦に当てはめられて寒い時期の祭となってしまった。稲荷は当初「稲成り」であったものが変化した。ご利益も稲の豊作から五穀豊穣となり、商売繁盛や出世や繁栄と広がった。全国で分かっているだけでも3万2千社、これに個人の庭に祀られている社などを含めれば大変な数になるだろう。

 当社境内西側に座す出世稲荷社のそばに山茱萸がある。山茱萸はミズキ科の中高木で、レモンイエローの花はひとつひとつがコミカルで、花期を過ぎてからの淡い新芽も綺麗だ。秋には生薬としても利用されるグミのような赤い実をつけ、アキサンゴの別名もある。本来山茱萸は幹の下の方からも枝をたくさん伸ばし、枝は真上に向かっていく。しかし庭を狭くし通りづらくなる下枝は人間の都合で切り落とされる。神社には祭がつきもので、9月の例大祭では狭い境内に百店ほどがひしめくから、大勢の祭客と夜店の大迷路で迷子さえ出る。山茱萸だけではない、45本ほどある梅も同様に下枝が払われるのは、夜店の屋根に当たらない高さにするためだ。さらには本来上へ伸びたい山茱萸であるから、余り伸びすぎると夏に青々と繁るケヤキなどと枝がぶつかってしまう。そこまで伸ばしてしまったら剪定する私は素人だから手に負えなくなる。そこで、上向きの枝も手入れできる範囲にカットする。かくして何年もかけて出来上がるのはキノコ型の山茱萸や梅。空を目指したい樹木の本当の形を人間の都合で変えてしまって申し訳ないが、境内という特殊な庭にいることを運命として我慢してくれ。そのかわり、愛でて大事にするから。ただし、梅も同様の形になるから、毎年花見に訪れてくださる皆様は見上げなければならず、さぞ首が疲れるのではないだろうか。公園などの梅園であれば目線で鑑賞することもできるが、そんなこんなの理由で、神社の都合をご理解していただきたい。

 もうすぐ10年を迎える3・11東日本大震災。風化しないよう気持ちを留めていても、災害はあれからも各所で起こった。そういう国だから仕方がないと思うことさえ許さないように、2月13日、10年を目前にして大きな余震が起こった。人の人生にとっての10年は長いが、地球の歴史にとってはほんの一瞬。地面は常に動いている。地球温暖化は人間の都合が生んだ人災だから頑張れば挽回できるが、地震は人間の都合でどうなるものでもない。せめて二次災害を引き起こす危険な物には万全を期してほしい。
 

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