宮司の徒然 其の23 町田天満宮 宮司 池田泉
へこたれない
酉年の今年、全国各地で鳥にちなんだ神社が賑わいを見せているようだが、菅原道真公をお祀りする天満宮や菅原神社、北野神社などは鷽(うそ)の置物などが人気を呼んでいる。
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菅原道真公の御霊を慰めお和みいただくため、境内には御祭神が愛した梅の木が多い。その梅に飛来すると言われる鷽は実在する鳥だ。菅原道真公が祭事を行なっている時に蜂の大群に襲われたが、鷽の群れが飛来して蜂を退治してくれたので無事に祭事を終えることができたという伝説が残っていて、そこから災いを嘘にしてくれるという縁起物として木彫りの鷽が作られたという。
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一方、武家政治が台頭してきた時代の始まりに無実の罪をきせられて配流される道真公が、九州へ向かう途中に道明寺(現在の大阪府藤井寺市、道明寺天満宮)に立ち寄り、慕っていた伯母と会い朝まで語り明かし、別れの朝を告げる鶏が憎いと歌を詠まれたという史実がある。これにより今でも道明寺町の住民は鶏を飼育しない風習があるという。
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鳥は長距離を渡るものが多い。その飛来や旅立ちは季節を知らせて、生き物ゆえに暦の24節季よりも農業の指針として大切な合図といえる。さらに植物の様子も含めて変化する季節を読み、季節と共に農耕民族として巧みに生きてきた日本。しかし長距離を渡ることで鳥インフルエンザも運んできてしまうのは困る。去年の後半も多くの養鶏場が膨大な数の鶏が殺処分された。有効な防御手段のない中でも、これ以上の流行は勘弁していただきたい。卵のない生活は想像できない。
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境内にはしばしば見知らぬ芽吹きが見つかる。明らかに鳥が食べた実の種が消化されずに糞と共に落とされて発芽したものだ。私的には鳥爆弾と呼んでいるが、愚か者が使う人間を殺戮する爆弾と違い、私にとっては嬉しい爆弾だ。しかし神社境内は正月、節分、お祭りなど、大勢の人で賑わう時期があって、発芽の場所とタイミングが悪いと新芽は無残に潰されてしまう。
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ある日、石燈籠の脇で5〜6センチの山桜の苗を見つけた。葉はまだ4枚。去年はこのちっぽけな山桜に大いに励まされた。一度地面に張り付くほどに踏まれたらしい茎は地面から1cmほどのところから真上に立ち直って伸びていた。小さいのに頑張り屋だ。鳥に食べられ、こんな所に落とされて、芽吹いたらすぐに踏まれて、でも負けない。私との出会いもこいつの運命。鉢に移して順調に伸びているが、かぎ型にまがった茎はなかなか治らない。花をたくさん咲かせるまでここにいるといいさ。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |