神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS
青葉区版 公開:2015年7月16日 エリアトップへ

「自由」の精神 かみしめ 【6】新石川・氣賀健生さん

社会

公開:2015年7月16日

  • LINE
  • hatena
現在は青山学院大学名誉教授を務める氣賀さん
現在は青山学院大学名誉教授を務める氣賀さん

 「日本中が常軌を逸していた時代だった」――新石川在住の氣賀(けが)健生(たけお)さん(88)は口を開く。1941年の太平洋戦争開戦時、旧制中学校2年。14歳だった。

 キリスト教神学者で牧師の父のもとに生まれ、進学した青山学院中学部は「当時には珍しく、実に自由主義だった」。巷に軍歌があふれ、軍事教練が必修となり陸軍将校が出入りするようになっても「鵜呑みにするな」と注意する教師。図画の授業では「固定観念を捨て、感性を絵に表わせ」と教えられた。「あの戦争の時代によく、と思う。狭い空間の中だったが幸せなことに自由を満喫できた」

 5年になってすぐ、学徒勤労動員で品川の製鉄工場に駆り出された。「1週間の予定がどんどん延長された」。戦火が激しさを増すにつれ、物資がなくなり材料が届かず、作業できない日が続く。「材料が来ない時は勉強させてくれ」と、工場内に読書室を作るようかけあった。ある日「勤労せずに本を読んでいる」と密告され、憲兵隊に連れて行かれた。「お前の神と天皇陛下とどっちが偉い、と聞かれた。そんな比較自体が意味をなさないと答えたらごまかすな、と殴られた。連中の気が済む返事をしないと帰れないんだ」。殴られ続け一晩留め置かれたが、生徒の中に陸軍元帥の畑俊六の孫がおり、その口添えで無事帰されたという。

 45年3月に卒業し旧制第二高等学校(東北大学の前身)に進学。寮生活を送っていた7月、仙台空襲があり、中心部が全て焼けた。徴兵年齢の引き下げで、召集令状を受け取ったのはその後のことだ。「ついに来たか」。死ぬに決まっている、と覚悟した。9月2日、本籍地の静岡県三島市の野戦重砲兵連隊に入るはずだったが、ほどなく終戦を迎えた。8月15日の晩、寮に代々伝わる蓄音機で1人、弦楽四重奏を聴き続けた。「終わったのだ」と、赤紙をビリビリに破いて捨てた。

 あれから70年。遠い記憶をたどりながら、日本の将来を憂う。「こうありたい、と思うことを自由に言えない状況はよくない。そういう世の中にしたくない」
 

戦後70年 語り継ぐ戦争の記憶

タウンニュースの各発行エリアで企画・編集した関連記事まとめ

http://www.townnews.co.jp/postwar70.html

青葉区版のローカルニュース最新6

国の重要文化財、神奈川県庁本庁舎が5月3日に5年ぶり一般公開

新入消防団員28人が研修

新入消防団員28人が研修

地域防災の一役を担う

4月25日

好成績 区長に誓う

好成績 区長に誓う

日体大SMG横浜

4月25日

今年もこいのぼり元気に

下谷本町の緑道

今年もこいのぼり元気に

藤が丘の飯田さんが掲揚

4月25日

平面作品を募集

平面作品を募集

あおば美術公募展

4月25日

詐欺被害防止に一役

詐欺被害防止に一役

青葉区薬剤師会

4月25日

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 4月25日0:00更新

  • 1月1日0:00更新

  • 10月19日0:00更新

青葉区版のあっとほーむデスク一覧へ

イベント一覧へ

コラム一覧へ

  • 目のお悩みQ&A

    コラム㊻専門医が分かりやすく解説

    目のお悩みQ&A

    『白内障の手術は両眼を1日でできますか?』

    4月25日

  • 幸福と訳すな!ウェルビーイング

    コラム「学校と社会をつなぎ直す」㉜

    幸福と訳すな!ウェルビーイング

    桐蔭学園理事長 溝上慎一

    4月25日

  • 教えて!職人さん

    教えて!職人さん

    vol.10 専門店の「ニセモノ」にご注意を!

    4月25日

青葉区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2024年4月26日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook