コラム「学校と社会をつなぎ直す」㉜ 幸福と訳すな!ウェルビーイング 桐蔭学園理事長 溝上慎一
『幸福と訳すな!ウェルビーイング論』を上梓した。はじめは「幸福と訳すな!」を頭に付ける予定はなかったが、ウェルビーイング=幸せと訳されることが多い世の誤解を正すため、大げさだが付けることにした。
ウェルビーイングは、ウェル(良い)+ビーイング(存在、状態)という意味である。本質的には、自分がどのように生きていきたいかというライフ(生活・人生)の問題を扱う概念である。生き方の問題だともいえる。幸福や満足という感情は、この上で自身のライフが良いかどうかを評価する指標として扱われる。ただ、幸せであればいいというものではない。個人の価値観や権利、人生の選択肢が良くも悪くも徹底的に認められる現代社会だ。もはや人からああだこうだと人生についてとやかく言われる時代ではない。言ってほしくても誰も言ってはくれない時代なのだ。
ウェルビーイングのもう一つの重要な側面は、自分の幸せだけを考えるのではなく、地域や社会のことも自身の大切な活動の一つとして組み込むことが期待されていることである。いくら自身のライフを自分が幸せと感じられるように考えよ、となるからといって、他者に配慮しない自分勝手な人ばかりになると、地域や社会は立ち行かなくなる。ウェルビーイングという概念を正しく用いて、この現代社会の課題に積極的に立ち向かいたい。
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