東京五輪柔道男子60キロ級で金メダルを獲得した高藤直寿選手。その活躍を”付き人”として裏方で支えたのが、青葉区出身の伊丹直喜さん(28)だ。
柔道の付き人はパートナーとも呼ばれ、伊丹さんは高藤選手のスケジュール調整や日々のアドバイス、練習や試合の帯同だけでなく、トレーニングも一緒にこなし、「畳の上だけでなく柔道に関わることの全てをサポート」する。通常はチームメイトなどが担うことの多い付き人だが、伊丹さんは世界的にも珍しい「専属付き人」として2015年から高藤選手を支えてきた。
すすき野小学校に通っていた伊丹さんが高藤選手と出会ったのは、小学5年の夏に都内で開かれた柔道合宿。体格が近いことから打ち込み相手になった。伊丹さんが1学年上で、2人とも東海大相模中学・高校に進み、長年互いの付き人を務め合った。ライバルとして「いつか倒してやる」と思っていたが、転機となったのは高藤選手が高校3年生の時に講道館杯という体重別柔道日本一を決める大会で2位になったこと。遠い存在になったと感じたと同時に「倒したいという感情が消えて、本気で応援したいと思った」と話す。その後も選手を続けたが、東海大学卒業と同時に引退し、大学院に通いながら16年のリオ五輪を目指す高藤選手の専属付き人を務めることになった。
「東京までよろしく」
そして挑んだリオでは銅メダル。2人が求めていたものではなく、「人生のどん底と思うくらい落ち込んだ」と伊丹さん。でも、その晩に高藤選手からSNSで届いたメッセージには「東京までよろしく」の文字。「自分より辛い思いをしているのに声を掛けてくれた。必要としてくれるなら覚悟を決めなければ」と付き人を続けることを決めた。
あの日から5年。家族よりも長い時間を一緒に過ごし、時には厳しい言葉も投げかけてきた。自分自身も律して全てを捧げ、二人三脚で掴んだ金メダル。その喜びを「言葉にならず抱き合って泣いた」と振り返った。
決して表には出ない付き人という裏方の仕事について「選手に必要とされなければできない。苦しいことも多いが、選手とともに歩み、充実感のある素晴らしい仕事。母親が裏方気質だったこともあり、受け継いでいるのかな」と笑顔で語る。選手の活躍はこうした人たちが支えている。
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