重症心身障害児・者(以下、重心児)が生活する入所施設不足を解消しようと、横浜市が整備する施設としては、旭区、鶴見区に続き3カ所目の施設建設を、保育所とあわせて港南台4丁目の市有地に計画中だ。入所を希望しながら在宅生活を送る重心児や、近隣自治体へ入所を強いられる現状に歯止めをかけられるか注目が集まる一方、地元住民からは計画の見直しを求める声もあがっている。
先天的理由または出産時の事故等により、重度の知的障害と肢体不自由がある重心児。ほぼ寝たきりで会話による意思疎通も困難、医療的ケアなしで生活できない者も多い。市内では南区の県立施設を含む3施設に約130人が入所し、常駐の医師や看護師らの支援を受け過ごす。
しかし、入所希望者すべてをカバーするには至らず、比較的余裕のある近隣自治体の施設に市が受け入れを依頼しているのが現状で、市によると市外の施設に入所している重心児は85人。静岡県浜松市の施設を利用するケースもあるという。
さらに、在宅で介護を受ける重心児は2011年3月時で831人。医療の進歩により老齢期の重心者が増え、介護者の高齢化も進む。鼻から通した管による食事の介助、体位変換、頻繁な痰吸引など介護者には大きな負担となり、潜在的な入所希望者も多い。
市内重心児の親による連絡会「ぱざぱネット」の下山郁子会長は「80代の高齢者が介護するケースも多い。親に何かあれば自力で生きられない重心児を思うと不安。子ども達の安全な暮らしのため一刻も早い整備を」と深刻だ。
これを受け、市は数年内に入所を必要とする重心児や市外施設からの転入希望者を約160人と想定し、当面は入所希望のニーズを満たすことができる定員200人規模の施設整備を計画。現在は地元説明会を開催している段階で、14年度の開所を目指している。
計画見直し求める声も
一方、建設予定地に隣接する港南台つぐみ団地の自治会では会員の意見集約を目的に、全600世帯を対象に賛否を問う投票を3月に実施。結果、建設反対が過半数を上回ったという。
ある自治会員は地元説明会を通じ、「大変なご苦労をされている方が大勢いると知った」と施設の必要性に理解を示し、建設自体に反対ではないとしながら、「重心児は市内に広く住むため、施設も多方面に設置すべき。入所待機者を一挙に解決しようとする市の場当たり的計画では。設計図の提示がなく、建設地が港南台であるべき明確な説明も足りない」と疑問を呈す。
また、現在は空き地の建設予定地は1万2846平方メートルと広大で、「災害時に生命を守る重要な場所」とし、大震災への意識が高まっている時期での建設計画に不安の声も多い。
これに対して市は、他地域に複数の施設建設は理想としながら、医療と福祉の側面をもつ施設の運営は「特殊なノウハウが必要で担い手が限られる」と実現性の厳しさを説明。また、「どんな場合も地元理解を得た上で設計図を作るのが市の基本方針。設計も地域の意見を聞きながら進める」としている。さらに、「防災の側面は疎かにできないが、地域には定められた防災拠点もある。規模に不安があればご相談に応じる」とし、「(市内への早期設置を求める)家族の声も多く状況は切迫している」と、計画はあくまで問題解決に向けた一歩と位置づけ、地元に理解を求めている。
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