港南プール 存廃含めて見直し中 15年3月末までに検討
横浜市は港南台6丁目の港南プールについて、行政サービスの選択と集中の視点から存廃を含めた見直しに着手している。利用促進や経営改善を図った上で、2015年3月末までに経営状況が改善されない場合は利用者数やコストなどを勘案し、廃止及び他施設への集約化を検討する方針だ。
市は所有するプールや野外活動施設等について、少子高齢化が進む状況や厳しい財政の中で増大する公共施設の保全費を確保する必要性から見直しの方針を掲げている。
港南プールはごみを焼却する港南工場の建設に伴い、近隣住民への地元還元を目的とした余熱プールとして1974年にオープン。一般プールや児童プール、幼児プールを備え、大人は1回400円、3歳から中学生までの子どもは1回100円で利用できる。06年に港南工場が廃止されるとボイラーで温水を供給する形になり、また、市の位置付けも地域還元施設からスポーツ振興に寄与する施設として変化している。12年度はボイラー経費として約1555万円かかっている。
利用者数はピーク時の1977年度で26万8894人だったが、08年度から10年度の3カ年平均で13万3659人と減少。同じく3カ年平均の税負担額は約7067万円に上る。さらに今後は多額の修繕費や保全費が必要と考えられている。
そういった中、港南プールは利用者を増やすべく、様々な工夫をしている。プールでは泳法などを指導する教室を週に42回実施しているほか、昨年11月には余剰の会議室をスタジオに改修し、スタジオでも健康体操やヨガ、キッズダンスなどの教室を週に7回開催している。スタジオの教室参加者にはプールの利用料金を無料とするなど、今後のプール利用を促す工夫もしているほか、スタジオを貸し出す方向で現在調整しているなど、利用者の掘り起こしに必死だ。そういった努力もあり、今年4月から8月までの利用者は前年比で2355人増の7万2139人と上向いてきた。
耐震化は未実施
一方、後手に回ってしまっているのが港南プールの耐震化だ。港南プールの耐震性能は構造耐震指標(Is値)0・3未満で、耐震改修促進法による分類では「地震の振動及び衝撃に対して崩壊し、又は崩壊する危険性が高い」レベルだ。市は耐震工事費用を1億7598万円と見積もっているが、廃止も含めて検討する見直し期間中に工事は着手できず、市担当者も「一刻も早い対応が必要だと認識しているが、手を付けられていない」と言葉を濁す。
利用者の声
週に1度利用している71歳の男性は「健康維持を目的に利用している。常連も多く、顔見知りとあいさつするなどコミュニティがある。年配の人の医療費削減にもつながるので、維持費はかかるだろうが、存続をしてほしい」と語った。週に2度利用している80歳の女性は「民間のプールと比べてずっと広い。なくなると困る。利用料金が高くなったとしてもいいので存続してほしい」と話した。小学5年生の男児を週に1度水泳教室に通わせている36歳の女性は「見直しをしていることは知らなかった。料金も安いのでなくなると子どもたちは困る。ただ、施設は古いと感じている」と感想を述べた。
本紙は12人に利用状況などを取材したが、8人は市が見直しをしていることを知らなかった。市担当者によると、見直しの基本的な考え方について素案段階でパブリックコメントを実施しているものの、現在はチラシなどを使って周知しているわけではないと説明。周知不足の面があることも浮き彫りとなった。
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