平成20年12月に廃止されて以来、当時のまま建物が残されている芹が谷2丁目の旧南横浜病院について、市民団体が有効活用策を模索している。これにあたり、昨年12月27日には初となる集会が開かれた。
昭和12年に開院した結核療養所を前身とする旧南横浜病院は、独立行政法人国立病院機構が運営していたもの。近年は医療の進歩に伴って結核による入院患者数が減少し、一般診療でも周辺に大型病院があることから患者が減って収支が悪化。改善の見通しが立たず、平成20年12月に閉鎖され、71年の歴史に幕を閉じた。
同院の閉鎖から2年が経つ現在、約3万平方メートルにおよぶ敷地は立ち入り禁止とされているが、耐震補強も完了している2つの病棟や事務所、寮などの施設は残されたままの状況だ。この状況を受け、同院から約100mの距離に住む大平力蔵さんは「土地・建物の遊休資産を地域のために使えないか」と、その活用案を提言書にまとめた。
その内容は主として、誰もが安価で利用できる入居型の老人福祉施設を作ろうというもの。そのほか、保育園や産婦人科も併設し、地域の雇用創出にもつなげたいとしている。芹が谷で生まれ育ち、同院の変遷をすぐ近くで見てきたという大平さんは、「長年結核療養所として貢献してきた施設が、さらに今後の高齢社会でも役立つものに生まれ変わり、明るい展望のもてる地域になってくれたら」と、提言に至った経過を語る。
この提言書は昨年9月22日に同機構へ提出。これに対して10月8日、同機構は公共性や病院事業などとの関連性を優先し、地元自治体である横浜市や神奈川県と相談してきたものの、現時点までに具体的な利用計画は示されていないことから第三者への売却も含め、自らの利用計画を検討していくと書面で回答した。
また、提言書については「少子高齢化社会に対応するため大変貴重なご意見」としながらも、制度上の問題から同機構が直接実施することはできないとのことだったという。
地域は賛成の声
これを踏まえ、計画を地域住民一体となって推進しようと、芹が谷開発推進協議会(仮称)が発足。12月27日には地域集会が開催され、これに地域住民や港南区選出議員など約110人が参加した。この会で実施されたアンケートでは、約97%が老人ホームの必要性を感じていることが明らかとなった。
大平さんは「決して簡単に実現できる問題でないが、今後このような計画は地域住民主体となって行わなければいけない。その一歩を踏み出せたのではないか」と感想を話していた。
今後は地域集会で集まった住民の声や要望をまとめた報告書を同機構に持参する予定のほか、協力してもらえる企業や団体探しを行い、医療や福祉の専門家の意見を取り入れながら計画を推進していきたいという。また、今春には2回目の地域集会を開催し、さらに具体的な意見交換を行いたいとしている。
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