レントゲン写真を取り入れた抽象画の個展を地元で開催する やまうち まさるさん(本名 山内 勝さん) 金森東在住 78歳
独自性豊かな前衛画家
○…「芸術家たる者、オリジナリティを出さなくては」。レントゲンなど写真のネガをキャンパスに取り入れる手法は、試行錯誤の末に生まれた。ネガは半透明のため裏に色を重ねられ、複雑な造形を作り出せる。「まるで宇宙の構造」と、宇宙をテーマにした作品も多い。レントゲン写真は50年ほど前に病院から廃棄処分されるものを150枚ほど譲り受けた。「そんなこと今ではまず無理だろうね」
○…満州で幼少期を過ごす。チェリストの父親にバイオリンを「習わされそうに」なったが、生活が苦しく母親の反対に遭い頓挫。肖像画家の祖父の影響で絵画に興味が移り、以来ずっと筆を握る。屋根に上り、屋根全体を大きなキャンパスにして遠くの風景を描いて叱られたことも。祖父や父親の現実を知る周りの家族からは「絵描きは金にならないからやめておけ」と反対された。
○…高校卒業後、生活のためにファッションデザイナーに。「僕の作った洋服が雑誌にもよく取り上げられたんだ」と笑う。「これも芸術の一環だったからね」。ファッションデザインコンクールに入賞するなど斬新なデザインに挑戦していたが、売れ筋商品を作らなければならないという葛藤もあった。仕事の合間にも油絵を描き続けた。そして退職したころから本格的に個展を開催した。
○…「高松次郎との出逢いが大きい」と前衛画家としての人生を振り返る。高校時代に知り合い、切磋琢磨する仲だった。「でも同じ所には戻りたくないね。この歳まで活動していると、あとは繰り返しみたいなもの。新しいものを見つけていかないと、とは思うがそれも大変」。新たな作品は制作しておらず「次の個展が最後になると思う」という。もともと物事を客観的に見る性格。「諦めが早いのかもしれないが、自分が感動しないと人を感動させることはできない」と分析するその顔は、やり遂げてすっきりした表情だった。
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