町田市立博物館より【13】 展覧会図録の作り方 学芸員 齊藤晴子
前回の記事をご覧になった来館者の方から、「この苦労話の続きは?」というご質問を頂戴したこともあり、今回は学芸員にとって展覧会関連の仕事の中で最も大変ながら同時に非常にやりがいのある図録の作成についてお話をしたいと思います。
センスと腕のみせどころ
図録を作る際、まずは全体の構成を考えるところから始めます。目次・あいさつ文・論文・用語解説等々、何にどれくらいページを割くのかを決めていきます。カラーページの作品画像をどのように配置するかは、学芸員の腕とセンスの見せ所です。
そしてとにかく原稿を書きます。中でも大変なのは作品解説と論文です。皆さん、作品には決まった名称があると思っていらっしゃるかもしれませんが、工芸には往々にして作品名がついていないことがあります。そういう時には他の作品の名称を参考にしたりしながら、学芸員が名称を考えます。制作年代も調査し、法量(寸法)も測って図録に掲載します。
それから、既に作品の写真がある場合は別ですが、なければカメラマンを雇って写真を撮ります。今回の「沖縄の工芸」展では、90カットくらいを丸3日かけて撮りました。これは立体の美術作品を撮るにしてはかなり速いペースだと思います。不自然な反射や映り込みが出ないようにライティングの位置を調整するため、作品1点を撮影するのに30分〜1時間くらいかかることもあります。
何度も校正
印刷会社に原稿を提出しても、まだまだ作業は終わりません。文字校正、色校正をしなければなりません。「沖縄の工芸」展の図録では文字校正を5回もしたのに、刷りあがったあとでいくつか間違いを発見してしまい、担当学芸員は若干落ち込んでいます。また美術作品は色が命なのですが、はじめに刷りあがってきたものは、本物と似ても似つかぬ色であることが多いので、「本物と比べて赤すぎる!」とか「輪郭線をはっきりさせるためにコントラストを強くして」などと指示をして調整するのが色校正です。
展覧会は始まってしまえば終わるまであっという間。図録を作らなければ、会期終了後にはほとんど何も残りません。会場に来てくださったご来館者様だけでなく、残念ながら来館できなかった方、後世の研究者たちなどのためにも予算の許す限り頑張っていい図録を作っていきたいと思います。
※「沖縄の工芸」展は町田市立博物館で10月18日(日)まで。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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