町田版 掲載号:2017年11月30日号
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町田万葉散歩【5】 「小野路鎌倉古道」沢野ひとし

 晩秋のころに半日かけて鎌倉古道を歩く。町田ダリア園の裏側に鎌倉古道の尾根道がある、丹沢山塊が扇状に広がって見える。冬は雪をかぶった大山が、腕を組みじっと荘厳に座っている。空気が澄んだ秋から山は凄みを増してくる。普段はバスの窓から山を一瞬見るくらいで、山への思いはない。

 まるで迫るような山の姿を前にすると、不意を突かれたように立ち止まり、沈黙して山と向き合う。「もう少し仕事をしたい」というと、山は「そうしなさい」と寛容に答える。

 七国山に向かう鎌倉井戸跡から、こころみ農園、町田ぼたん園と歩き、坂を下って鶴見川にかかる丸山橋のあたりで一息つき汗をぬぐう。周りの樹木はすっかり葉を落としあたり一面に落ち葉で埋めつくされている。

 若葉のころはむせかえるように、葉が一分の隙を見せないように重なり合い、若い男女が抱擁するかのごとく離れない。やがて夏が来て秋が訪れると、葉はやがて色づき、誰に告げることなく、ひっそりと静かに落ちていく。まるで示し合わせたかのごとくお互いに距離を保ち、ぶつかることなく葉は散っていく。

 木を見つめていると、人間の一生とすごく似ている。というより人間も自然界の中で生かされてきたのに過ぎない。

 今朝(けさ)の朝明(あさけ) 雁(かり)が音(ね)聞  きつ 春日山 黄葉(もみち)に けらし わが情痛(こころいた)し

穂積皇子(ほづみのみこ)

(巻八―一五一三)

 明け方に雁の音を聞きました。あの春日山の紅葉も赤く染まったことでしょう。私の心も悩ましく痛む。

 万葉集は密かに思いを込める人に送った歌が圧倒的に多い。私も紅葉の中で一つぐらい愛の歌を作りたいものだ。
 

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